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最強コスパな怒涛の人間劇場~新宿末廣亭 9月16日 昼夜通し~

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名前が一朝ですから、一朝懸命頑張ります!

 

寄席で自爆テロなんか起こるわけないでしょ?

まぁ、芸人は時々自爆してますがねぇ。

 

JALがどうしてJALになったか知ってかぁ?ちげぇ!!!」

  新宿末廣亭の9月中席の番組を見る。今どきの言葉で言えば『俺得』という言葉がぴったりなほど、好みの演者がバンバン出てくる。これはいてもたってもいられない、という訳では新宿末廣亭に直行する。

 朝の早い時間にも関わず物凄い行列である。こういう根気のある連中は昼夜をぶっ通しで聞く連中に決まっているので嬉しくなる。貧乏人風情が3000円ばかりの金で一日の3分の1を潰そうというのだから、嬉しくならない筈がない。嘘です。そんなこと一ミリも思ってもいません。

 だが、3000円でこれだけの顔ぶれをみっちり、8時間近く見れるというのはなかなか無い。他に類を見ない最強のコストパフォーマンスに興奮しながら、私は席に着いた。

 最初から終わりまで話すと長くなるのでかいつまんで話すことにする。

 

 序盤1 春風亭一花 黄金の大黒

 

 声のトーン、間が上手い。絶妙に笑いたくなるリズム。やっぱり一朝門下はこれだよなぁ。という十八番の口調。前に見た時よりも抜群に上手くなっている。すっとぼけた感じの声色と間がとにかく面白い。さすがは精鋭揃いである。

 

 序盤2・天どん師匠、菊之丞師匠 『通信簿』、『鍋草履』

 客入りが多い時の演者はとにかくノッているのが常である。この日もいつも以上にノリノリで最高の二人を見ることが出来た。

 

 昼席、仲入り前 柳家小満師匠 『あちたりこちたり』

 もうね、小満ん師匠だけで3000円払っても価値があるくらいのすばらしさ。もうね、随所に粋な知識をこれでもか、これでもかとぶっこんでくる小満ん師匠に痺れる。これはもはや真骨頂なのではないかと思えるほどの演目。小満ん師匠の自作ということで、ユーモアに溢れているし、明日から女を口説くために使いたいワードが連発。粋で乙でクールな男に痺れっぱなし。また一つダンディになった気分で仲入りに入った。

 

 昼席トリ 春風亭一朝 『妾馬』

 さらりとやりながらも、滲み出る愛嬌と人情。紙切りの時に孫が生まれたお客さんの話に感化されたのか、会場中がしんみりとした空気に包まれる。身分の違い、新たな命の誕生、そして八五郎の粋な振る舞い。全てが温かくて、そうだよな、人間ってこうでなくっちゃいけないよな、というような熱いものが胸をとんっとつく。

 一朝師匠は決してオーラ全開で落語をやる人ではない。あくまでもさらりと、流れるように言葉を紡ぐ。でも、その一つ一つに江戸の風を吹かせている。決して嘘くさくないし、あくまでも基礎に沿っていて変に誇張したりしない。一朝師匠が一朝師匠らしく落語をやっているというだけで、誰にも真似のできない唯一無二の落語が完成されているように思えた。

 一朝師匠は一朝師匠自身も凄いのだが、その弟子たちも凄い。全てが凄いわけではないけれど、弟子の誰もが自分の個性を自覚している感じがする。久しぶりに素敵な妾馬を見ることができて満足。

 

 夜の部 中盤 ホームラン

 

 久しぶりのホームラン。出てくるまでホンキートンクの二人が出てくると謎の勘違い。大勢のお客のせいなのか、とにかくノリまくっている二人。いいねぇ、あんな爺になっても勢いを失わずに楽しく漫才をやっているのだから、その姿を見ているだけでもう満足

 

 仲入り前 柳家小里ん 『親子酒』

 歌舞伎役者ばりの人相で十八番、親子酒。猫みたいな口元と目元が実に可愛らしい。酔った親と子の演じ方も面白くて、不思議と滲み出る粋な雰囲気。円熟の芸。

 

 終盤 橘家文蔵 『夏泥』

 文蔵師匠は『道灌』が抜群に上手い。その次くらいに『夏泥』が上手い。三三師匠のリアル感とは違って、文蔵師匠の場合は盗人側が可愛らしく、逆に盗みに入った家の主が悪知恵者と言った感じ。それでいてどこか憎めない。盗人でありながらも盗人に徹しきれない盗人のおかしみ。身ぐるみ剥がされた博徒でありながら、巧妙に金をせしめる家の主。どちらも文蔵師匠らしくて面白い。会場には文蔵師匠のファンであろう人のお姿も見られて、愛されているんだなぁ。という印象。

 

 夜の部トリ 柳家喬太郎 『極道のつる』

 あー、今日は時そばかなぁ。と、マクラの長さで若干の不安を覚えているところで、突然の「ヒデェ!ちょっとこっちこい!」で、「おっ!聞いたことの無い奴だ!」と興奮を覚える。そこからはもはや、『笑いの爆破テロ』ばりの爆笑に次ぐ爆笑が起こる。とにかく頬骨と腹筋が痛くなるほど笑ってしまった。とにかく笑える個所が多いし、登場人物がぶっ飛んでいるし、古典落語『つる』をベースとしていながら、そこに極道テイストを加えて、古典落語『つる』を強烈にオマージュしている落語だった。

 そのぶっ飛び具合と、言われてみればそうだよな、という不思議な説得力で進んでいく『極道のつる』は、新しい現代に適応した落語と言えるだろうと思うし、さらには、古典に真っ向勝負を挑んで新作として完成させた喬太郎師匠の才能っぷりに驚く。新作に入ったかと思いきや方向転換して古典テイストを含みつつ、そこからブーストして新作に持っていくという手法。他にも『残酷な饅頭こわい』や『歌う井戸の茶碗』など、古典を新作にガラリっと変えて行くその手法、着想、実現力にはただただ笑うしかない。一体いつからこれを考えていたんだろうというくらいに、随所に古典へのツッコミが見られるし、その古典に沿って振り切れた人間たちが繰り広げる出来事は、とにかく笑える。もう会場が笑い死にするのではないかというくらいに笑いに包まれていたし、それはもはや物凄い時間を共有していたと思えるくらいに凄かった。

 古典落語もそれなりにやっている喬太郎師匠だが、改めて古典と新作のハイブリッドでとてつもない爆発を起こす落語家だと思った。本気になったら笑い殺されるのではないかというくらいにパワーがあった。

 

 総括。

 3000円は安すぎる。東京かわら版割引を使ったとしても、とにかく安すぎる。それでいてとんでもなく笑えたり、涙したり、驚いたり出来るのだから、寄席は本当に凄い。9月中席もあとわずかだが、是非とも昼夜通しで新宿末廣亭の番組を味わって頂きたいと思う。

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