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天国で見守る歌丸師匠とともに~2018年9月30日 芸協らくごまつり~

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私もそろそろあの世へ行きますが、私の死因は『孤独死』です。昇太と一緒で『孤独死』です。

 

いいですか皆さん。これから八歳の子と三十五の講談師の勝負ですよ。私の講談が果たして八歳の子に届くのか!

 

金の目でダルそうにしているっ!

 

笑いで雨を吹き飛ばそうぜー

台風接近中の9月30日朝、寒いし雨降っているのは嫌だなぁ、と思いながらも、そう言えば芸協のらくごまつりって行ったことないんだよなー、と思い立ち、レポートも書くついでに見に行こう。ということで、電車を乗り継いでやってきました『芸能花伝舎』。

10時前だというのに物凄い行列。会場前には緑色の服を着た方々がパンフレットと一緒にアンケート用紙を配ってくれた。このアンケート用紙は福引券になっていて、きちんと回答すると福引を行うことができる。

10時の開場とともに芸能花伝舎の正門、入って右には『こてきとー隊』という楽団が演奏をしていた。雨はまだ幸い降っておらず、外で演奏することが出来ていたようである。どどっと中に入っていくのかと思いきや、入り口すぐのところに『ホール落語のチケット売り場』があって、その行列に並ぶ。今回のお目当てはC2ホール第二部の神田松之丞さんの会と、午後のC1ホール第四部の桂伸べえさんの会だった。

チケットを購入したら、何やら人だかりの多い方に向かった。初回の場合は人がたくさん集まっているところに行くと良い物が見れるという経験則に従って見に行くと、早速開会の挨拶をしている。ざっと見えたのは米福師匠、市馬師匠、米助師匠、小遊三師匠、昇太師匠の錚々たるメンツ。歌丸師匠のお話をされながら、市馬師匠も一節どころじゃなく歌っていた。落語協会落語芸術協会の垣根なく、和やかな開会式だった。

終わって、私は即座に体育館に向かった。サインラリーに参加するためと、福引を行うためである。200円でスタンプラリーの用紙を頂き、福引券を渡してクジを引くと色は紫。商品の中から色紙引き換え券を頂くことにした。

体育館の前には『ゴミ捨てーション』なるゴミ捨て場があって、そこにカッパを着た筆者激推しの桂伸べえさんがいた。お、ゴミの分別係なんだなぁ、と思ってお声がけをさせて頂き、早速サインを頂戴した。将来有望な物凄く面白い二つ目の落語家さんである。この後のホール落語でも語らせて頂こう。

文治師匠のサインを頂き、近くにあった神田松鯉先生がやっている『見世物小屋』に入る。入場料200円。実にくだらない言葉遊びの見世物だったが、とても面白かった。こういうくだらない時間を共有できるところに素晴らしさがあると思っている。松鯉先生との距離も近くて驚きだった。御年76歳。物凄く活力のある方である。

見世物小屋が終わるとすぐに行列が目の前に飛び込んできた。見ると今をときめく神田松之丞さんがサインを書いている。すぐに列に並んでサインを頂き、出番を終えた松鯉先生にサインを頂いて、神田松鯉一門の親子揃ってサインを頂戴する。

サインラリーの性質上、12人に貰わなければならないという意志が働くが、私は個人的に好きな落語家さんだけを貰いたかったので、サインを頂く落語家さんは限定することにした。

そうこうしている間に、C2ホール第二部が始まるということで列に並んだ。雨も本降りになっておらず大変に動きやすい。12時に開場してすぐに席に着く。好位置に着いたぞと思いながら松之丞さんの出番を待つ。

開始時刻になって松之丞さんがゆったりと登場。見世物小屋のマクラから、お決まりの講談体験マクラ、そして寄席ではお馴染み『和田平助』。この話に入る前に、松之丞さんは前列にいる男の子の歳を聞いた。八歳と答えた男の子に向かって松之丞さんは「今からは勝負ですよ。八歳の子に私の講談が届くかどうかの勝負です!」というようなことを言ってから、話に入った。

じっくりと丁寧に理解しやすいように説明をしながら、クライマックスまで盛り上げていく話術はさすがの一言。短い話でさえ凝縮された松之丞エッセンスたっぷりで、特に短刀を振り下ろす和田平助のシーンは念入りに説明し、七色の声と表現しようか、声色を巧みに変えながら景色を描写していく。そして最後に「お時間がいっぱいいっぱい」と言ったところで拍手。松之丞さんは八歳の男の子に向かって「私の講談、どうだった?」と聞くと、男の子は照れながら頭を横に倒す。それを見た松之丞がすかさず「私の講談を見た男の子!」と言って先ほどの男の子の真似をする。楽しそうに笑いながら松之丞さんは「精進して参ります」と言って下がっていた。テレビでどれだけ持て囃されても、ひたむきに芸に励むお姿。普段はラジオでパーパー悪口ばっかり言ってると思われがちな方も多いと思うが、本当は心遣い、お客様への配慮、そして講談師として真剣に取り組んでいることは、言わなくても松之丞さんに接した方なら誰でも思うはずである。

芸協らくごまつりは、そんな芸人さんの一面が見れるから素敵だ。普段、高座からではなかなか分からない素の姿を見ることができる。実に良い機会なのだ。だから、寄席に行っている方はもちろん、芸人さんにもっと近づきたい方は是非ともオススメである。

さて、松之丞さんの後はコント青年団。この二人も寄席ではお馴染みのネタ。時事ネタを絡ませつつオチまでふんわりと終わっていった。トリは三笑亭夢花師匠。ハリー・ポッターのドビーそっくりのゴブリンっぷりで『饅頭怖い』。くだらない小噺を畳み掛けて行くスタイル。そのくだらなさが面白い。三人出て1000円。連雀亭に行って見ていると思えば安いものである。

終わってから外に出て、再びサイン集め。ここまでで桂伸べえさん、桂文治師匠、神田松鯉師匠、神田松之丞さんの4人にサインを頂いている。サインラリーは12人で一枚のため、後8人。お気に入りの師匠を探してサインを頂く。池袋演芸場でとても楽しい『宿屋の仇討ち』を見せてくれた桂伸治師匠、爆笑のマッドマックス、三遊亭笑遊師匠、深夜寄席で最高の開口一番を務めた春風亭柳若さん、独特の声と間で力強い桂小南師匠、どこかで聞いたことはある春風亭柳橋師匠、笑点では泥棒キャラでお馴染み三遊亭小遊三師匠に頂く。

そういえば福引券で頂いた色紙を引き換えていなかったと思い、寄席文字のお店に行って引き換えてもらう。書いて頂く一文字は『伸』の字にした。何かと伸の字には思い入れがある。特に桂伸治師匠の一門は私が激推しの伸べえさんがいるので、その字をチョイスした。

それから豚汁を頂いて、体育館でしばらく休憩。休憩が終わって外に出ると黒山の人だかり。何だろうと思って見ると三遊亭円楽師匠がやってきていた。肺がんを公表された後で、10月から入院するらしい。即座に写真を撮って、サインも頂きたかったのだが、何せ物凄い人だったので断念する。

ホール落語のC1ホール第四部のチケットを入手するためチケット売り場に移動。無事に桂伸べえさんの会をゲットすると、近くに三遊亭遊子さんがいた。この人も伸べえさんと並んで期待の二つ目さんである。遊三師匠の弟子ということだが、声も良いし、何より聴いていて気持ちのいいリズム。大工調べなんかやったら最高だろうなぁ。と思いつつ、今後が楽しみな二つ目さんにサインを頂く。

これでようやく11人。最後は瀧川鯉八さんに頂いてサインラリー終了。サインラリー抽選会に参加して、末廣亭の割引チケットを頂く。

再び舞台の方に向かうと、浅草ジンタというバンドの演奏が始まろうとしていた。黒いスーツの美しい佇まいで、ちょっと古めかしい雰囲気の曲を演奏する。司会の瀧川鯉朝さんが一所懸命に司会をされていた。

この辺りから雨がぽつぽつと降り始めてきた。素早く第4部の列に並ぶ。芸協らくごまつりはスタッフさんがとても親切だ。落語協会では殆どを落語協会所属の落語家さんがスタッフとして働く中で、落語芸術協会は一般の方、大学の落研のボランティアの方と思われる方の働きがとても素晴らしい。「開演まで時間があるのでおトイレは大丈夫ですか」とか、「チケットはご購入されていますか」とか、列に並んでいる時に声をかけられた。とにかく祭りに来ていただいたお客様への心配りが素晴らしい。そんな皆さんに支えられて芸協らくごまつりは開催されているのだなぁと感心した。

さて、開場時刻になってホールに入る。好位置、問題なし。開口一番は桂伸べえさんだ。もうかなりファンなので、これだけ多くのお客さんが入っていると、「思いっきり、伸べえさんらしさをぶつけて!」とめちゃくちゃ応援態勢になっている自分に気が付く。伸べえさんには不思議な魅力があるのだ。私の笑いのツボにドハマりしているのもさることながら、声の調子と間がとにかく面白い。しかも、最近の高座ではメキメキと勢いが増しているように感じるのだ。これはもしかすると私だけのなのかも知れないが、格段に落語が上手になっているというか、今まで以上に弾けてきていて、伸べえさんらしさが全開なのだ。日に日にアップグレードされていくネタの数々に笑いと興奮を覚えている私がいる。と同時に、大勢のお客様に少しでも伸べえさんの良さが届いたらいいなー、と思いつつ私自身も非常に楽しんでいる。

出囃子が鳴って舞台に座り、桂伸べえさんが話し出すと、もうそれだけで全てオッケーなのである。

「笑いで雨を吹き飛ばそうぜー」

という他愛のない動きも、お決まりの小噺もとにかく面白い。なぜ面白いのかというと、やはり私の期待を上回ってくるところだと思う。他の客にウケているとこっちまで凄く嬉しくなってしまうのだから不思議なものだ。本当に深夜寄席で初めて桂伸べえさんの『宿屋の仇討ち』を見て以来、魔法にかかったようにずっと期待を裏切られず、むしろ爆笑に次ぐ爆笑を巻き起こしていくのが桂伸べえさん、その人なのである。

そして『狸札』。これも明るくて元気があって、かつ間が面白い。下手をすればちっとも面白く無い話になりがちな話を、とにかく面白い落語に変える伸べえさん。これはもはや天性の素質があったと言っても過言ではない。未だにこれ以上面白い『狸札』に出会ったことが無い。まだ未体験の方には是非とも見て頂きたい。

最高の拍手で舞台から下がっていく伸べえさんの後で、マグナム小林さんのバイオリン漫談。もはや寄席常連の私には見慣れた芸である。

トリで出てきたのは三遊亭小遊三師匠で『夏泥』。これも小遊三師匠らしいさっぱりとした落語で、文蔵師匠や三三師匠とも違う、非常にさっぱり感のある演出だった。それでも小遊三師匠独自のアレンジが随所に光っていて、ああ、こういう芸が出来るようになってくると、いよいよ老練な真打なんだな、と思わせるほどに静かに江戸前な落語だった。

ホールを出ると大粒の雨。伸べえさんにお声かけをして帰ろうと思ったが雨が酷かったのですぐに帰った。

道中、頂いたサインを眺めてにやにやしながら家路についた。

 

総括すると、去年は歌丸師匠がまだご存命で、それはそれで盛り上がったようである。私も行けばよかったと後悔したが、今日の芸協らくごまつりもそれに劣らず大盛況だったのではないかと思う。何より、期待の二つ目が着々と育っている。今の二つ目さんたちが無事に真打を迎えるころには、落語芸術協会はさらなる発展と盛り上がりを見せてくれる筈だと信じているし、事実そうなるだろうという確信が私にはある。それをどこまで見届けることが出来るかは天運であるけれど、少なくとも見に行くことが出来るうちは、見に行きたいと思っている。

今日も寄席のご常連の方々もちらほらと見えた。特に女性が多いなぁという印象である。そんなご婦人方に見守られ、そして天国にいる歌丸師匠に見守られ、芸協らくごまつりは幕を閉じた。

次回は5月26日(日)だそうで、来年が楽しみだ!

 

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