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あなた、まだ桂伸べえを知らないでいるの?~2018年10月13日 深夜寄席 桂伸べえ 古今亭今いち 春風亭昇吉 三遊亭遊子~

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失敗談を失敗するっていう

 

私の体重が減るかどうか!

 

稲葉さんってご存知でしょうか

 

いい大学出てるんですよ。大阪芸術大学 

風が少し冷たい。いつものスタイルでは風邪を引くだろうと思い少し着込む。新宿の街の明かりを浴びながら、雑踏を掻き分けて新宿末廣亭へ行く。開演前だというのに、凄い行列である。いよいよ、私の記事によって『桂伸べえ』さんの人気も出てきたか!と思ったのだが、どうやら皆さんのお目当ては三遊亭遊子さんらしい。私の記事がどれくらいの影響力を持っているか知れないが、それは本当に微々たるものだと思う。何せ、反応があるのは松之丞さんの記事くらいで、そのほかはチラホラ読まれる程度である。もっとまだ知られていない、最高の落語家さんを紹介しなければならない!という不思議な使命感を持ちつつ、入場。

開口一番だというのに木戸銭を受け取ってチケットを配る伸べえさん。私のお目当ては当然、彼である。普段は連雀亭に良く出演されており、本当に働き者でありながら、かなりのシャイボーイという、もう落語をやるためだけに生まれてきたみたいな、そんな凄い雰囲気を持った人なのである。

入場すると、前列は鉄壁の常連組。それなりに入っている。ざっと7~80人はいる。ヤバイな、伸べえさんの素晴らしさが伝わっちゃうなと思いつつ着座。ご婦人が多い。何人か会場内を撮影している方がいたが、場内は撮影禁止です。

今いちさんの諸注意のあと、出囃子が鳴って開口一番が出てきた。

 

桂伸べえ 『新聞記事』

登場と同時に伸べえさんらしさ全開の間。私が初めて伸べえさんを見たのは、深夜寄席のトリで『宿屋の仇討ち』をやったとき、思えば、あの日から私は桂伸べえさんという稀有なフラを持った落語家にドハマりしている。最初に言っておくが、今回の記事は私の思いっきり伸べえさん贔屓の記事になります。あしからず。

もはや伸べえさんの私にとってはお馴染みのマクラなのだが、何度聞いても笑える。それは危なっかしく話すからである。だいぶ緊張しているなぁ、という印象。けれど、その緊張すらも落語に活きてくるという素晴らしさ。会場を巻き込んでポンポンと不思議な笑いを起こしていく。これが人間国宝である柳家小三治師匠の言う「笑わせるのではなく、思わず笑ってしまう」ということなのだと思う。とにかく面白いのである。普通の芸人であれば、笑わせようとか、器用に笑いのネタなどを挟んできてウケようとするが、伸べえさんにはそれが無いように感じるのだ。安い芸で笑いを取るのではなく、自らの個性をそのままに、古典演目で昇華させる。その独特の間が癖になってしまうのだ。ポロっと呟く言葉にさえ、噴き出してしまうほどの面白さを感じる。これは決して馬鹿にするとか、舐めているとかいう話ではない。むしろ、唯一無二の誰にも真似出来ない伸べえさんの間が、会場にいた何人ものお客さんの笑いを誘っていたのだ。

私からすると、緊張でほぼ目が死に、表情が硬くなっていた伸べえさんだが、お馴染みのくすぐりで会場を盛り上げる。これは是非聞いてほしい。独自のくすぐりなのか、誰かから習ったくすぐりなのかは分からないが、今までの古典演目を刷新していく特別なワードをとにかく連発させるのだ。さらに、登場人物が悩む姿も良い。

簡単に『新聞記事』の内容を説明すると、間抜けな八っつあんが隠居のところに行き、隠居から「天ぷら屋の竹さん、殺されたよ」という話を聞く。興味津々の八っつあんに隠居は事の詳細を語り、最後に「竹さんを殺した泥棒、あげられたよ。入った家が天ぷら屋だからね」というオチを言う。八っつあん、大いに喜んで他の人に話すのだが、失敗する。という話である。

この会話の中に、様々な独自のくすぐりを挟み込む挑戦の姿勢、さらには伸べえさんの強烈なテンポと間で畳み掛けられる天性の語り。これがとにかく面白いのだ。一度ハマってしまうと癖になる面白さを伸べえさんは既に獲得しているのである。

声も凄く良い。ナヨナヨっとしていながらも、あのトーンも笑いを誘う。緊張していないときはもっと凄い。威勢が良くて目が活き活きしていて、もうパンパンっと進む新聞記事を知っているだけに、私からすると「本気の伸べえさんはまだまだこんなもんじゃないぜ」と思ってしまった。

私としては、三遊亭笑遊師匠や桂南なん師匠、もっと言えば瀧川鯉八さんにまで脈々と続く独自の世界観を持った落語家の系譜に、桂伸べえさんは連なる。

圓生師匠の言葉を借りるとすれば、以下のような感じになる。

 

 道場の試合では十のうち七太刀くらい打ち込む自信はあるが、野天の試合(真剣勝負)だと七太刀くらい斬られる

まさに伸べえさんは野天の侍なのである。その鉈のような切れ味で迫られたら、観客とて無傷ではいられないのだ。

まだまだ語りつくせないのだが、熱くなりすぎると寝れなくなるのでやめる。

 

古今亭今いち『堀ノ内』

ダイエットを生でみる、という高座。

 

春風亭昇吉『稲葉さんの大冒険』

まさかの新作!だったが、既に喬太郎師匠で見ていた私にとっては、新しい発見は無かった。

 

三遊亭遊子『天狗裁き

声とリズムが良いので、個人的には『大工調べ』が性に合っていると思う。でも、品と場慣れしている感じがあり、もっと肚に演目が入っているなと感じたら、化けるかも知れない。

 

ざっと書きましたが、総括すると伸べえさんを見たくて、見に行って、満足。という会でした。伸べえさんの魅力が深夜寄席に来た皆様に伝われば良いなと思います。諸事情があり、短く記事を致しました。それでは、良い寄席をお楽しみくださいませ。

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