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人の皮を被った笑二だよ~2018年10月21日 立川談笑月例独演会&一門会スペシャル~

 

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壮麗な子供騙し

 

彼女と

 

兄さんは人の皮を被った笑二だよぉ~ 

レポを書き終えて急ぎ向かったのは武蔵野公会堂。Twitterでたまたま見つけた立川談笑さんの発言の中に『片棒・改』と『鼠穴・改』の文字。これは見逃せない!と思い向かう。お出迎えはお弟子さんの談洲さんと吉笑さん。

立川流の客層をいつもの客層判断で見る。はい、もうね、マニア中のマニアだなという雰囲気をバンバン感じました。顔つきも凄いのよ、もうペンとメモを持ってカッチカッチやりながらメモを取る人もいれば、物凄い蘊蓄を滝の如く垂れ流す「談志はね~、談志わね~」の人から、「す、す、す、すんま、すんま、せんねぇ」の人まで、あ、やっぱちょっと他とは違うわという雰囲気を感じた。

朝の講談会ではキリリとしたお客様、途中の連雀亭ではぼけぇっとしたお客様、そして立川流のお客様は凄い!何より落語通!おまけに物凄く立川流を愛してる!そして勉強熱心。一瞬、宗教のセミナーに来ちゃったのかな、という軽い洗脳を受けつつも、会場に入り着座。

武蔵野公会堂はキャパ350人ほど。公会堂というだけあって、演説会や講演会に向いている作り。詳しくは画像を見て何となく理解してほしい。幕が渦を巻いているようでカッコイイし、BGMはエイミー・ワインハウスの「ヴァレリー」でお洒落な雰囲気。終始「ん?カフェ?バー?」みたいな空気感の中、もともと警戒心が強いので、周囲のお客をじっくりと観察する。恐らくは談志を見てきたであろう世代から、若い女性も多い。立川流の落語に惚れてきた人たちなのだなぁと感心していると、いよいよ開始のお知らせ。

ここでお馴染みの『二番太鼓』でも鳴るのかなと思いきや、まさかのバッキバキのロックンロール。曲名が分からなかったので、知っている方が見ていたら、教えてください。

なんじゃこりゃと度肝を抜かれていると、出てきたのは立川談笑師匠。談志の思い出から『片棒・改』。これがまぁ、とにかく面白い。最初に出てくるのがオカマで、そこからド派手な祭り好き、そして最後はハーフ(笑)。ブラックユーモアがこれでもかとてんこ盛りで、まさにブラックユーモア・パフェ状態。気持ちが良いくらいにネタがちりばめられていて、それでいて客席へのパフォーマンスもお見事。開口一番でがっちりと客を掴んで去っていく。

それから、大喜利。これが非常に面白かった。特に笑二さんが半端じゃない。沖縄出身で滲み出る優しいお姿とは裏腹に、物凄いブラック(笑)一番まともなのは吉笑さんじゃないだろうかと思えるほど。最後の解答は凄いよ。もうね、会場が見事に一致して言葉を失う空白の間。半端じゃないっすよ、笑二さん。

あまり大喜利のお題は覚えていないのだが、最後は確か『本物の談笑一門と偽物の談笑一門、その見分け方は?』だったと思う。これが凄い答えを引き出しましたよ。お題を出したY2Jさんに拍手です

大喜利で優勝したら次にネタが出来るという権利を見事に手にした笑二さん。11枚に5枚足して16枚で優勝。この11というキーワード。あの会場にいた人は、その偶然の一致に驚愕したと思う。

仲入りの後で出てきた笑二さんは振り切れた様子で『弥次郎(沖縄ver)』、嘘を付きまくる弥次郎が実に面白い。優しい風貌に私はもうだまされません(笑)大喜利の回答然り、衝撃の事実然り、一番ヤバイ笑二さんが見れて凄く嬉しかった。

振り切れたような『弥次郎』は凄く面白かった。もう会場の流れとして完璧なネタの選択だったと思う。『元犬』なんかで抱いていたイメージを完全に覆した笑二さん。シブラクじゃ絶対にあの雰囲気は出さないでいくんじゃないだろうか(笑)

見事に爆笑をさらった後で足早に登場の談笑さん。マクラは無く『鼠穴・改』。竹(たけ)さんを福建省から横浜にやってきた竹(チク)に変えて、中国人の兄弟をベースに『鼠穴・改』がスタート。現代的にアレンジされた話で、随所に笑いを挟み込む。特に鼠穴を『マウスホール』とか、『孫悟空というウイルス』とか、『携帯が鳴る』とか、細かく改変されていて面白い。鼠穴のエッセンスはそのままに、現代風にアレンジされていても、通底する本質は変わらない素敵な落語だった。

談笑師匠の面白さは、そのブラックにアレンジされた落語の魅力もさることながら、一門の弟子の特異性にもあると思う。一番弟子としてしっかり者かつ、技巧派の吉笑さん。ニコニコして人が好さそうに見えて、とんでもないものを隠し持っている笑二さん。ダンスが上手でイケイケな談州さん。個性がぶつかり合っていて物凄く面白い一門だと思ったし、やはり談笑師匠は師匠として、落語に新しい感覚を注ぎ込む姿を見せていた。

立川こしら師匠や志ら乃師匠やらく兵さん等々、立川流の落語家さんは古典に現代風アレンジを付加する落語家さんが多いように私は思っている。どちらかと言えば本寸法よりなのは立川談幸師匠や立川左談次師匠のような方々である。落語協会にも鈴々舎馬るこ師匠が現代風アレンジをやっていたり、芸術協会では落語という枠の中で独自の感性を発揮している笑遊師匠なんかもいたりする。

 

総括すると、とにかく落語は幅が広いなぁと私は思った。いささかカルト集団的な匂いはぷんぷんしたものの、しっかりと落語そのものの中で個性を発揮されていた。立川談笑一門。物凄い精鋭が揃っているなぁと思う反面、もはや野党?のような雰囲気さえある。でも、お客さんを楽しませようとするお姿がとても素敵で、頂いた手ぬぐいも大事にお宝にしようと思っている。

 

朝は講談に始まり、昼は期待の二つ目を、そして夜は一門会でばちっと締める。今宵も素敵な週末でございました。さて、来週はどんな出会いがあるのやら。

それでは、またの機会に。