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自称・演芸ブロガーが語る日本演芸(落語・講談・浪曲)ブログ!

Swing&民謡の素敵なクロスオーバー~2018年12月1日 渋谷クアトロ 民謡クルセイダーズ~

 

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ドンドンパンパン ドンパンパン

 

最後まで楽しもう

 

フレディ・マーキュリーが犬になって飼い主に向かって泣いた。

クイ~ン

 

いつまた会えるやら

文菊師匠の会を終えて、私は渋谷の街に降り立った。って天使かよ。というツッコミはさておき、今日は渋谷クアトロで民謡クルセイダーズのライブである。

とりあえず場所だけは見ておこうと思い、会場5時間前にクアトロの周辺をうろうろ。すると、『よしもと∞ホール』と書かれた建物の周辺にずらりっと行列がある。何かと思って探ってみると、どうやらM-1関連らしい。残念ながら家にテレビが無いので、テレビはテレビが備わっている飲食店でしか見ていない。昔はテレビっ子だったし、齧りついて歯を悪くするくらいテレビが好きだったのだが、今ではすっかり生の演芸に惚れ込んでしまって、財布の諭吉がどんどん逃げて行く始末。

クアトロでのライブまで時間を持て余していたので、近くを散策していると、『RECOfan』という、私にとって宝の山のような、中古CD・レコードショップを発見。絶対置いてないだろうと思っていたバブルガム・ミュージックの名盤が棚に陳列されていた。もちろん、お高いので諦めたのだがThe Foundationsのベスト盤を購入。本当はトニー・バロウズのベストを買おうとか、バブルガム・クラシックスVol.4を買おうと思ったのだが、5000円以上もしたので、だったらitunesで聞く方が安いと思い立ち、購入しなかった。

もしも大学時代にあんなCDショップを発見していたら、様々なミュージックに金を落としていて、大変なことになっていただろうな。と思いつつ、今は潰れてしまった思い出のディスクユニオンを懐かしく思った。

考えてみれば、私は中学時代に洋楽にハマって以来、Youtubeの影響もあってか、あらゆる音楽を聞いてきた。メタルだけはどうしても好きになることが出来ず、それ以外のラゲエ、じゃなくてレゲエやダブ・ステップやら、スカやらアフロやらにハマった時期もあったし、当然、ロック・パンクにもはまった。マニアック過ぎて誰とも会話できないバンドにたくさん出会ったし(例:Cock Sparrer)、日本のロックはチバユウスケさんと山口隆さんのおかげで色んなものを知れたし(今は民謡にどっぷりだけども)、様々なミュージシャンに出会うことで、そのルーツを探るだけの時間とお金があったのも事実である。

以前の記事でも書いたかも知れないが、そんなこともあって、日本の音楽に飽き始めていたのだが、久方ぶりに心躍らされたバンドが民謡クルセイダーズである。民謡×ラテンという極上のミックスを発掘し、現代で鳴らしたバンドである。

東京CAYでのリリース・パーティはもちろんのこと、記事にも書いた福生市民会館でのライブにも行った。どこにでもご常連の方はいるようで、柳家はん治師匠そっくりのお客さんがいることを私は知っている。

 

さて、そんなわけで、渋谷クアトロに到着である。

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噂には聴いていたが、人生で初めて渋谷クアトロにやってきた。

ざっと周囲を見渡すと、40代から50代とみられる方々が多い様子。若い頃はいろんな音楽を聞き、民謡やラテン音楽に惹かれてきた世代が多いように見える。年齢が若いバンドには若い客が多いように、年齢が高いバンドには年齢の高い客が多いようである。もちろん、これは私の体感である。夏の野外ライブ、サマーソニックでは付き物のモッシュやダイブ、前列への押し合いのような乱暴な雰囲気は皆無。むしろ、落ち着いてゆったりじっくりとライブを味わいたいという雰囲気が漂っていて、会場に入ってしばらく後からやってきた客が「あれ、椅子ないの!?」という驚きの声が聞こえてきて、どうやら落ち着いた雰囲気のライブになりそうだと思って安心した。音楽を聴くと体を動かさずにはいられない人間はどうやら少ないらしい。

開演時刻前になると、会場はびっしりと人で埋め尽くされる。それでも、満員電車のような窮屈感は一切ない。お互いに適当な距離を保って邪魔をせず、あくまでもじっくりと聞こうという暗黙のルールが布かれているかのようである。民謡という音楽がそうさせるのだろうか。ラテンほどのバリバリ体を動かして踊りあかそうという雰囲気はない。

定刻になって、まず登場してきたのは金管楽器の部隊、ついでドラムとベース、そしてピアノ。余談で思ったのだが、ライブ中にスマホで動画撮影をしている人が見受けられた。普段、寄席で禁じられている行為が許される会場であったとしても、ライブを楽しむ姿勢として、あまり私は良い印象を持たない。演芸は記録に残さず記憶に残すべきであり、記録に残したいのならば自分が芸に触れてどう思ったかを記録すれば良いと思う。演者だって、動画撮影されているとわかったら、あまり気分の良いものではないと思う。むしろ、気分を害すると思う。

しばらくのインストゥルメンタルの後で、吾妻光良さんが登場。ズート・スーツに身を纏い、派手なエレアコを持って登場。この人はどうやらピック(三味線で言えば撥)を持たないようで、指弾きでギターを弾く。丸くて太くて柔らかい音が出るので、温かみのあるサウンド。セットリストは他に任せるが、一曲目が『最後まで楽しもう』であったことだけは覚えている。

何よりも素晴らしいと思ったのはベースとドラムである。鬼神のような表情で迫力のドラムを叩く一方、ベースはまるで老舗のバーのバーテンダーのような、驚くべき落ち着きようで巧みなベースラインを弾いている。どんなバンドにも共通して言えることだが、リズム隊がしっかりしていると、メロディを奏でるブラスやボーカルなどは、思う存分暴れることが出来る。バンドにとってドラムとベースは、心臓、車で言えばエンジンそのものなのである。

吾妻光良さんについては、生粋の音楽ブログ、ODAさんのサイトで見て知っていた。ODAさんのブログはコアな音楽ファンにもオススメなので、こちらに紹介しておきたい。

WASTE OF POPS 80s-90s

 

ちらっと見聞きする程度のバンドだったが、実際に生で見ると迫力が違うし、歌詞もサラリーマンの悲哀のようなものが入り混じっていて面白かった。曲順は忘れたが『ですよね』という曲や『焼肉アンダーザムーンライト』なる曲をやっていた。年齢層は60代が平均の様子。60代特有のいい加減さもありながら、しっかりと演奏されていて面白い。ちょくちょく吾妻さんが出だしを忘れるというのも、なかなかスリルがあって面白かった。どうやら吾妻さん目当てで来ていたお客さんも多い様子。落語好きになってからすっかり演者との距離感が近いことに慣れてしまっている自分を自覚する。

中学生や高校生の頃は、ライブで見るバンドは殆ど会話することの出来ない神のような人たちだと思っていた。今でもそう思っていた名残りのようなものが私にはあって、なかなか演者さんにフランクに話しかけることが出来ない。大体意思表示は古臭くて、ガッツポーズで「今日、良かったです」とか、親指を立てて「最高でした」という意志表示を演者さんに伝えることしか出来ない。本当だったらフランクに話しかけて「今度一緒に飲みに行きましょう」とか「お昼一緒にどうですか」とか、連雀亭の若手さんを誘いたかったりする。いつ沸き起こるんだろう、その勇気(笑)

さて、話が逸れた。そんな長年のファンに支えられた吾妻光良&The SWINGING Boppersの後で、いよいよ民謡クルセイダーズの登場である。

 

まず笑ってしまったのは、最近何かと話題の『ボヘミアン・ラプソディ』という映画の影響もあってか、メンバーが『We will rock you』のリズムに合わせて登場してきたことである。考えてみればボーカルはフレディ塚本さんである。そのフレディ塚本さん、フレディ・マーキュリーの物真似をしながら登場。この様子を見て会場爆笑。

まさか「We will rock you」を歌うのか!?と思いきや、ネタはハゲの小噺。案外会場がスルーしていて面白かった。演芸ともなると、即座に反応できる小噺である。

その後は熱狂しすぎてあまり曲順は覚えていない。ただ最初にちょっと残念だなと思ったのは、ベースのイカツイ人ではなくて、違うバンドでベースをしているイシグロさんという方だったところ。今回初めて聞いたのだが、やはりどこかリズム感が違うように感じられて、残念。最初の二曲くらいはその悲しみであまり楽しむことが出来なかったのだけれど、途中からは諦めて楽しむことを決意。相変わらず「おてもやん」は色気たっぷりでムードたっぷりだし、新曲でまだCD化されていない「牛深ハイヤ節」も、早くCDで聴きたいと思うほどにノリノリの一曲である。

フレディ塚本さんは出たり引っ込んだりするのだが、民謡の歌声は抜群で、串本節やホーハイ節は相変わらずのお声で盛り上がっていた。民謡とラテンの素敵な融合。東京CAYでのライブから随分と逞しくなったように思うし、福生での東京キューバン・ボーイズとのライブで感じた物足りなさを感じさせない、素晴らしいライブだったと思う。唯一の心残りはベースが違ったことくらいだろうか(笑)

アンコールでは吾妻光良さんとThe Swinging Boppersから数名登場し、「会津磐梯山」を演奏。途中ハプニングもありつつ、素敵な両バンドの演奏を楽しむことが出来た。どのライブでも最後はゲストと共演する。これを見るのも楽しみの一つである。

フレディさんは伊勢丹の紙袋のような、相変わらずのお着物。同じくボーカルのMEGさんは赤くてお綺麗なお着物。ギターの方はルフィの麦わら帽子のようなものを被っていた。私としてはサックスとボンゴ?の方の演奏が好みである。

今年のライブ納めは民謡クルセイダーズになった。果たして来年はどんな素敵なバンドに出会えることやら。

それでは、皆さま、またの機会に。