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浪曲は燃えている! Rokyoku's burning~2019年1月1日 木馬亭~

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 人は心よ 見た目じゃないよ

 

せめて君のために歌を書きたいけど

もどかしい想いはうまく歌にならない

 

スターライトパレードな連雀亭がSEKAI NO OWARI、ならぬ2018年の終わりを締め括った後で、星が降らなくても眠れない夜を過ごした私は、誰に連れて行かれるでもなく浅草木馬亭の地に足を運んだ。

浅草寺の境内へと続く長い行列を見ていると、真っ黒い山芋が境内の中で洗われて出てくるのではないかという気がしてくる。去年は戌年ということもあって、柔らかい銀行さんが拵えた白犬の像が景観をぶち壊していた。今年は三井群に住む友達がウリボーの銅像VISAカードを配っているかと思ったが、景観を損なうような像は無かったゾウ。

木馬亭の前では天中軒景友さんと天中軒すみれさんがチラシを配っていた。その横では木馬館の役者さん達が、お客様と写真を撮っていた。私もデーモン閣下ばりのメイクをして「貴様を浪曲師にしてやろうかぁ!」と三味線を持って客に襲い掛かり、音締めならぬ首絞めを行って浅草寺の交番に連れ込まれ、罪は『浪曲』で罰として口三味線と浪花節を一節唸らされて釈放されたい。と想像したが、やめた。

木戸銭を払うと、ガムみたいな白い包み紙に包まれた何かを渡された。後に家に帰ってそれを開けると、金色の猪のアクセサリー。縁起が良いと思いながら、鞄の中に入れておく。

相変わらず長時間の着席は厳しい椅子であるが、浪曲を長時間聴こうという体力は何とあったので、ぶっ通しで聞いた。さすがに全てを書くのは時間を要するので、気になった演者と演目だけ記載する。

 

はる乃/秀敏『真柄のお秀』

もはや浪曲の一つの到達点であるというような、風格も声も節も、何もかも桁違いに凄まじいはる乃さん。秀敏師匠の三味線に導かれて、怒涛の勢いで話が進んでいく。はる乃さんはまさに『情熱の人』で、イタリア人が見たら「コンプリメンティ!、ローキョク!コンプリメンティ!」と声を発するくらいコンプリメンティな人で、マンマがミーアな力強い節を聞かせてくれる。

この話を誇張して言えば「北斗晶山下智久と結婚して、ジャイアント馬場を生む」みたいな内容で、誇張せずに言えば「ガタイの良い女が侍と結婚して、後世に残る侍を生む」というような話。

はる乃さんは『不器量な女性が、心の清らかさで出世するという話』を浪曲で披露されている。この世の中に不美人など存在せず、地球上の全ての女性は美しいと思っている私には、あまり共感できる話ではないが(えっ、なんですか読者の皆様のその顔は)、笑いと涙でほっこりする良い話である。特にガタイの良い女であるお秀が、ご先祖様に祈る場面はハッとさせられて胸が締め付けられる。

きっと勇気と希望が湧いてくるし、「人は見た目じゃなくて心よ!」と強く思うだろうと思う。私からすれば、世の女性は化粧なぞしなくても十分に綺麗です。(あれ、読者からの冷たい視線を感じるぞ・・・)

 

太福/みね子『若き日の大浦兼武』

安心安定の太福さんとみね子師匠。やっぱりCDより生の浪曲は痺れる。岩倉具視が大浦を呼びつける場面の後のてんやわんや感が泣ける。

この話は簡単に言えば『岩倉具視の落書きを大浦兼武が買い、それによって兼武が出世する』という内容である。誇張して言えば『バスキアの絵を買ったZOZOの前澤社長が、それによってディカプリオになる』みたいな話である。今回から誇張シリーズを勝手に始めました。

絶品なのは岩倉具視が大浦兼武の金を握りしめ、「悪かったねぇ」の後の節。これがほろりと来る。CDでも生でも、どっちで聞いてもほろっと来てしまう。是非、生で聞いて胸を温めてほしい。

 

一舟/美『暁の唄』

言うことが正直無いくらい、凄い節。声。そして全身から滲み出る優しさの風。もう聞いて、泣いてください。

 

孝子/貴美江『竹の水仙

甚五郎ものが聞ける!と感動。Youtubeの動画で凄まじかった京山幸枝若師匠の『竹の水仙』をテープだったら擦り切れるほど聞いていたので、大興奮。

孝子師匠の圧巻の節と、貴美江師匠の抜群の三味線。悔しいかな、どう表現して良いか分からない。この二人は正に究極の二人で、二人で一つというような、ドラゴン・ボールで言えば、孫悟天とトランクス、危ない刑事で言えば、タカとユージみたいな、そんな究極のバディである。

この話は簡単に言えば『名人が宿代の代わりに作った竹の水仙が、高く売れる』というお話である。誇張して言えば『西村賢太がソープ代の代わりに書いた苦役列車が、芥川賞を取る』みたいな話である。(かなり語弊がある)

最初の節から、物語の笑いどころ、そして最後まで。私としては最後は節で聞きたかったなぁ。と思うけれども、さらっと語りで終わった。いずれ、どこかで最後は節で締めくくられる『竹の水仙』を聞いてみたい。

 

総括 浪曲は燃えている!

前座さんに若くて綺麗な女性が多く、浪曲界が今、かなり盛り上がろうとしている。後の名人と呼ばれるような才能を持った若い人達が、まだ数は少ないけれど誕生しようとしているのだ。今後も、若くて美人な浪曲師、曲師さんが増えて行くことは間違いない。どんな世界も美人が多いと嬉しいものである。眼福である。

新年早々気の抜けた記事になりました。どうかご容赦を。