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自称・演芸ブロガーが語る日本演芸(落語・講談・浪曲)ブログ!

シバハマラジオは鳴り止まないっ!~文化放送 シバハマラジオ~ 2019年3月28日

台本

 

月刊QR

 

ハイテンション

 

エロス

 

今週の1ページ 

ラジオが僕に

2018年10月2日、僕はラジオの前で惑星の誕生を待っていた。新しいラジオ番組が始まるとき、そこにはビッグバンのように大きなエネルギーがある。それはみるみるうちに形を成して、一つの星になる。シバハマラジオ。落語の世界に肖って、それは生まれた。幾つもの耳と心を掴んで夢中にさせてくれる電波。目に見えないものが、目に見えないものを揺らす。発信源はラジオに関わる全ての人々。想像も出来ないくらいに色んな人が、19時から21時までの二時間、ラジオの向こうにいる。言葉は、声は、耳と心を傾けている人々に向けて発信される。それは、一方通行の言葉なんかじゃない。ある時は街に出て直接声を聞く。SNSを利用して色んな人々の意見を取り上げる。ラジオは皆で作られる。一つの星が生まれ、その星に住み着いた人々が、思い思いに協力し合いながら、生まれたての星の中で笑いあうみたいに。シバハマラジオは膨張していく。宇宙の膨張が止まらないように。どこまでもどこまでも、色んな人を巻き込んで、色んな人に声を届けて。寂しい時も悲しい時も、何か仕事をしているときも、バスに揺られているときも、電車に揺られているときも、家の中でそっと布団にくるまっているときも、ラジオは流れ続ける。ラジオに国境はない。シバハマラジオ。この惑星の誕生の瞬間を、僕は、そして僕達は、待ち望んでいたのかも知れない。名の知れぬ落語家の言葉に耳を傾け、心を奪われて、落語に興味を持ち、やがて、シバハマラジオが一つの楽しみになる。名の知らぬ落語家はいつしか、かけがえのない落語家になる。名前を忘れることさえ出来ないほどに、落語家に夢中になる。シバハマラジオ。この惑星が、消えてしまうなんて信じられないよ。終わる運命にあることは十分に分かっていたけれど、星はやがてやってくることも知っているけれど、こんなに楽しい半年間は、こんなにラジオに夢中になった時間は、後にも先にもなかっただろう。

 

でもね、

 

 シバハマラジオは鳴りやまないっ!

 

ハイテンション こしら師匠の火曜日

惑星の始まりを切ったのは立川こしら師匠。シバハマラジオで唯一の真打だ。シバハマラジオが最初に公表された時、第一回の放送のパーソナリティなのに、シバハマラジオ宣伝のための広告に、写真の載っていなかった立川こしら師匠。僕はこしら師匠が大好きだ。かなり知的で若干詐欺師チックなのに、誰よりもラジオ慣れしていて戦略的。LOFT9で行われたシバハマラジオの生ライブの時も、他の曜日のパーソナリティから愛されていた。Youtubeで配信された飲み会の時も、場が混乱しないように纏め上げる姿は、真打という肩書きを越えた、大人の統率力を感じた。これは想像だけど、シバハマラジオの指針を他のパーソナリティに示したのは、こしら師匠だったんじゃないか。火曜日のド頭にこしら師匠がガツンと放送をすることによって、確実に後続の曜日を引き締めていたように思う。他の曜日が二人体制であるのに対して、こしら師匠は一人である。一人でも2時間を持たせることの出来る力量もさることながら、ゲストも豪華だった。新・ニッポンの話芸でお馴染みの鈴々舎馬るこ師匠、三遊亭萬橘師匠、広瀬和夫さん。一之輔師匠や立川志ら乃師匠、桂宮治さんや立川笑二さんやらく兵さんなど、落語好きにはお馴染みだけれど、初心者にとっても刺激的な落語家さんがたくさん出演された。シバハマラジオの開拓者にして、誰よりもパーソナリティとしての存在感を放ち続けたこしら師匠。最高の火曜日がここに誕生したのだった。

生ライブの時も、場を巻き込んでいく。もはや台風のような人だ。お客さんを味方につけて、知的で、理路整然としていて、考えていないようで、めちゃくちゃ考えている気がする。それはちゃお缶のトークからも分かった。僕はちゃお缶をもちろん全缶買って、こしら師匠の言葉に耳を傾けた。でも、内容は秘密だ。これは惑星に生まれた一つの洞穴に入るようなもの。ちゃお缶を買った人だけが入れる空間。ちゃお缶を買えなかった人、惜しいことをしたぜ。

 

反逆とゆるふわ 吉笑さん&鯉八さんの水曜日

鯉八さんが風邪っぴきの中、吉笑さんの野心溢れるトークと策略がさく裂し続けた水曜日。この組み合わせは凄かった。鯉八さんの摩訶不思議・縦横無尽なゆるふわワールドに対して、吉笑さんは現実に起こった様々な物事に対して、機関銃のように言葉を放ち続ける。ラジオに立ちはだかった月刊QRだったり、タカハシさんだったり、身の回りの物事に言葉で立ち向かっていく吉笑さんの勢いはすさまじかった。何よりも驚きだったのはオリエンタルラジオ中田敦彦さんの乱入だろう。ラジオの先輩として、シバハマラジオを盛り上げ、エールを送った中田さんの心意気もさることながら、その中田さんに思いっきり影響を受けて、シバハマラジオという大草原を槍を持って突き進む吉笑さん。その後ろを筋斗雲に乗って追走するかのように、独自のペースを崩さない鯉八さん。この二人の温度差が堪らなく面白かった。上は熱いのに、下はぬるい風呂みたいな感じだ。タカハシさんに切れ続ける吉笑さんも、凄く吉笑さんらしくて笑ってしまった。生ライブの時は、かなり真面目に場を展開していたし、酔っぱらってホットワインを飲み続ける鯉八さんを横目に、自らに与えられたパーソナリティとしての役割、そしてシバハマラジオを誰よりも愛し、誰よりも継続させたいという思い。吉笑さんの漲る野心に対して、こしら師匠の冷静な分析と助言もありながら、ちゃお缶の売り上げによって、特番枠を獲得した吉笑さん。この実行力、そして熱意。シバハマラジオを通して伝わってきたのは、吉笑さんの物事を成す実行力だ。最後に嬉しいお知らせを発表した鯉八さん。筋斗雲による追走の中、芸を磨き、独自の世界で多くの人々を魅了し続けた鯉八さん。時に理解できないくらいのゆるさとふわふわ感を見せるけれど、それら全てを含めて瀧川鯉八という一人の落語家の世界が、シバハマラジオの中で花開いていた。台本をバラされて慌てふためきつつ、そこを逆手にとって聞く者を引き付ける鯉八さん。そして、自らの師匠である瀧川鯉昇師匠を迎え、立川談笑師匠との最高のトークまで聞くことが出来た。落語を聞く人にとっては、もはや周知の事実であるけれど、吉笑さんと鯉八さん、それぞれの師匠が出演された回は伝説だと私は思う。何よりも知己に飛んだ鯉昇師匠のエピソードに対して、温かい眼差しが見えてくるかのような、優しい語り口で受け止める談笑師匠。吉笑さんと鯉八さんの師匠としての風格が、シバハマラジオにより一層の深みを与えることになった。

僕は二人が大好きだ。シバハマラジオの次の生ライブも見に行く。リスナーの方もたくさん、LOFT9に集まってくるみたいだ。僕は今、それが楽しみでならない。吉笑さんが情熱を捧げ、その後ろを他の曜日が支えながら突き進んできた。そうだ、みんな思いは同じなのだ。終わらないで欲しい。ずっと続いてほしい。惑星はどこか遠くへ行ってしまうけれど、大丈夫。鳴り止んだりはしない。この半年間で、僕の耳から入り込んで、心をワクワクさせてくれた時間は、ずっと鳴り続けている。

 

 暴走と可憐と江戸の風 柳亭小痴楽さん、入船亭小辰さん、西川あやのさんの木曜日

小痴楽さんの放送コード無視の発言、小辰さんの知性溢れる今週の一ページ。二人のパーソナリティを纏めつつ、まとめきれない西川あやのアナウンサーの三人で進む木曜日。何よりも小痴楽さんが最高である。生ライブの時も酔っぱらって最高に粋な姿を見せていた。小難しいことは考えずに、自分の心に素直に言葉を発する小痴楽さんの姿は、シバハマラジオのリスナーを勇気付けた筈だ。高座に上がれば、江戸の風が吹き荒れ、立て板に水の語り口で聞く者を一瞬で魅了する。結婚もされているし、何よりも愛嬌があって憎めない。言う人が言えば暴言になりかねない言葉であっても、小痴楽さんの正直で、真っすぐで明るい言葉はいつも爽快である。その爽快感と並走するように、小辰さんは小痴楽さんに新しい扉を開き続ける。小痴楽さんの暴走を宥めるかと思いきや、全く違う方向の話をしていたり、小辰さんも小辰さんで不思議な人である。それでも、ちゃお缶を聞くと小辰さんの人となり、芸に対する思いが感じられて、ラジオで魅せる顔とはまた違った一面を知ることが出来た。小辰さんは何より声が素晴らしく良い。なんだか少しエロいのだけれど、それが妙に落語家っぽくて素敵だ。今週の一ページは偉大なコーナーである。誰もが興味を持ったし、実際に漫画を手に取った人も少なくない。小辰さんの言葉に感化される小痴楽さんの姿も容易に想像できた。

西川あやのアナは、めちゃくちゃ綺麗である。生ライブで見た時は心を奪われる美貌の持ち主。そんなあやのアナに絡む小痴楽さんの姿も最高だった。Youtubeで放送された飲み会の姿も、まぁ、ねぇ、最高だったよね。

サンキュータツオさんとの放送では、まだまだ落語を知らなかった西川あやのアナも、だんだん落語に詳しくなってきた様子。何よりも落語に触れる機会を与えられたことが凄いと思う。西川アナの一つ一つの反応も、まるで落語に初めて出会った時の感動を思い出すかのように新鮮だった。小痴楽さんの爽快な言葉と、小辰さんの今週の一ページと、西川あやのアナの美しい声が聴けなくなるのは寂しい。生ライブを心して待とう。

 

エロス&エロス 春風亭昇々さんと春風亭ぴっかりさんの金曜日

バハマラジオ唯一の男女コンビ。昇々さんのド変態性とぴっかりさんの大人の女性の色気が、パープルな金曜日を形作っていたように思う。特に生ライブの時も、昇々さんは絶好調で、Youtubeの飲み会放送の時も思ったが、とにかく女性に対する思いが溢れ出ている。最高である。前にも書いたかも知れないが、絶対にモテるはずなのに、絶妙にモテない感が発揮されていて、軽くあしらうぴっかりさんの色気、されるがままの西川アナの姿など、見ていて少し羨ましかった。高座では、独自の変態性を突き詰めた新作落語で多くの人々を魅了する昇々さん。春風亭小朝師匠門下で、落語の実力は申し分ないほどに磨き上げられているぴっかりさん。この二人の化学反応を見るのは楽しかったし、二人がまるで付き合っているかのような、ひょっとしたら恋が芽生えてしまうのではないかというような、抑えきれないリピドーを爆発させまくる昇々さんが楽しみだった。

 

 

総括 僕はラジオ

こちらFMでもAMでもない、放送ですらない放送局MORINO TELL HER。彼女に伝えて欲しいことは幾つもあるけれど、敢えて一つだけ言うとすれば、シバハマラジオは最高のラジオだ。それは決してパーソナリティの力だけじゃない。番組に関わった全ての人が最高だった。確実に、Twitterをにぎわせていたリスナー達。あなたもシバハマラジオのパーソナリティだ。シバハマラジオの放送が始まると、いつもタイムラインを賑わせてくれたリスナーの人たち。僕は君のツイートを見るのがとても楽しみだった。君はいつもシバハマラジオについて語っていた。無邪気な子供のように目を輝かせて、落語家の一つ一つの言葉に反応しながら、君は笑っていた。ラジオを越えて、様々な落語に触れて、そうそう、落語という演芸そのものにも惹かれて、君は今、無限の宇宙の中で、落語という宇宙船に乗った。宇宙船には君の名前も確かに刻まれている。半年間の、僅かな星だったけれど、紛れもなくこの星は、この半年間、どの星にも負けない光を放ち続けてきた。その過程で、様々な人々が、シバハマラジオのタオルを手にした。君の送った言葉は放送に乗り、それを聞く多くの人の耳に届いた。僕はそれを知っているし、君はそれを誇ってもいい。君の言葉は確実に、シバハマラジオを聞いた人々の胸に届いた。シバハマラジオは、君の言葉も原動力として、ここまで回転し続けてきたんだ。

僕はこれまで、殆どTwitterでシバハマラジオについて呟いては来なかった。それは、僕がtwitterが苦手というのもあった。言葉はいつも140字に収まらなかったからだ。その内、色んな人がシバハマラジオについてツイートしているのを見た。僕はそのツイートを見ていた時に、「あ、これは僕がツイートしなくてもいいな」と思った。シバハマラジオを聞いて、ツイートする人たちの言葉は、いつも僕の頭の中で、目を輝かせて笑っている顔となって立ち上がってきた。その言葉を見ているうちに、僕は僕の気持ちがその人よりも強くないことを知ったし、僕は僕の中に無い言葉でツイートし続ける人々を見ているだけで、心が満たされるようになった。だから照れくさいけれど、シバハマラジオに関連したツイートをした人には、とても感謝している。ありがとう。あなたがシバハマラジオを盛り上げてくれました。

バハマラジオは終わってしまうけれど、鳴り止んだりはしない。僕はこれが言いたかった。4月10日に行われる生ライブも、シバハマラジオの名残りを惜しむ会とは思っていない。特番で、これからも、多くの人の心に届く、最高のラジオ番組が聞けると思っている。同時に、シバハマラジオを聞いた人たちが、落語の世界にどんどん入り込んできてほしいと思う。

かつて左談次師匠は「落語は若者にみすてられています」と答えたという。今、左談次師匠がいたら、同じことを言うだろうか。私はきっと言わないだろうと思う。落語は今、若者に注目されていると、答えるだろう。残念なことに、左談次師匠のラジオ出演は叶わなかったけれど、もしもシバハマラジオに左談次師匠が出ていたら、どんな言葉を語ったのだろう。どんな未来を、その心中に思ったのだろう。

なんて、そんな夢想はこの辺にしておこう。僕はラジオに教えられたのだ。この電波は、とびっきり胸躍る電波。今宵、僕の語りは人称を変えた。そうだ、僕の右には酒瓶がある。こいつの蓋を開けて、お猪口に酒を注いで一杯、片手で持って口に近づける。香りが鼻をつく。美味しそうだ。どれ、一口頂こう。

いや、やっぱり止そう。

また夢になるといけねぇ。