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自称・演芸ブロガーが語る日本演芸(落語・講談・浪曲)ブログ!

落語的ホストクラブ『MEIJIN』~2019年7月12日 渋谷らくご 20時回~

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ウナちゃんマン

 

どないやっちゅーねん

 

ぱんつ一丁っすよ これだよ

 

めんどくせぇ 

 

1か月前

渋谷らくごの7月公演が公開になったとき、私は番組を見て思った。

 

ホストクラブやんっ!!!

 

もちろん、落語好きには堪らない、もう一度書く、堪らない四人が出ているではないか。しかも客席は美人揃いの予感(森野リサーチ)で、これは行くしかあるまいぞ、アルマタイト、と思っていた。

だから、私はこの日が待ち遠しくて仕方が無かった。

つべこべ書かずに、会員制でもなければ、自由参加の落語的ホストクラブについて語ることにしよう。

 

桂三四郎 世間の車窓から

トップバッターは上方のイケメン落語家、三四郎さん。会場入りする前のお姿はピンクのシャツ。もう既にカッコイイ。若い女子ならメロメロ(若い女子じゃないから分からないけど)のルックス。甘いボイス。それでいて、野球少年のように笑いに貪欲。笑いのストライクを取るために、何度も何度もしつこくネタを投げ続ける姿勢に、スリーアウトでもノーチェンジです私。永遠に表の回を9回続けてコールド負けも何のその。何度投げられても全部がストライクゾーンって、そんなバッターいるかーい。私か。

文菊師匠のことを語られていて、もうそれが、私としては、オネエ入りますけど、

 

 もっとちょうだいっ!!!

 文菊のプライベート話

 もっとちょうだいっ!!!

 

と、ドーピングしたIKKO、又は発情期の牛かよってくらいに口から涎垂らして興奮してしまうわけなんですが、この話題を嫌味なくさらりと語られる姿はお上品。

ホストクラブに入っていきなり三四郎さんが出てきたら、初っ端からシャンパンタワーですわ。リゼだかロゼだか知らないけど、ハマショーのMoneyばりに「ドンペリニヨォオオン」とか言いながら、「飲んじゃってー!飲んじゃってー!」のコールに応えるように、次から次へと諭吉飛ばしますわ。ベッドでドンペリニヨォオオンですわ。

ちょっと乱れた。

三四郎さんはマクラからめちゃくちゃ面白い。謎の概念『フユキタル(冬来たる)』と時うどんの関係性(フユキタルは時うどんで無効化できるのかっ!?)とか、この三年という間で結構な確率でフユキタルが来ているという事実に笑ってしまう。

全てを曝け出して、剥き出しで笑いに直進する三四郎さんの姿勢、これはもはや、ある程度知名度が上がってきた俳優が、鍛え上げられた肉体美を惜しげもなく写真集で披露するみたいな、そんな現象だと思う(どんな現象なんだよっ・・・)

肝心のネタは『満員電車で起こる様々な面白い出来事』を見ているような話で、何となく『浮世床』っぽいワイワイ・ガヤガヤな感じ。もちろん、『浮世床』の舞台は髪結床で、上方落語がルーツ。上方の落語家さんは今まで見てきた印象だと、『笑わせてナンボ』という感じがする。とにかくこれでもか!これでもか!と笑える話を畳み掛ける姿勢が凄まじい。芸の真剣味もさることながら、会場をドッカンドッカンと笑わせてこそ芸だ!という感じが、押しつけがましくなく、こってりとせず、じわじわと伝わってくる感じがして、それがとても心地が良い。

起きていることは大したことじゃないのに、登場する人物のデフォルメされた個性が畳み掛けるようにして次から次へと披露される。物語を見ている立場だと、実際の電車の中で起きるかも知れない風景だなと思うし、行ったことのない土地だからこそ、余計に楽しく見ることが出来るのかも知れない。案外、知らないとか、行ったことが無いというのは、物語を楽しむには重要なことなのかも知れないと思った。

丁度、明日から上方である。時間があれば大阪の山手線である大阪環状線を一周してみようかしら。

爆笑に次ぐ爆笑を巻き起こし、颯爽と羽織を掴んで去って行く三四郎さん。おっといけねぇ。掴んだのは羽織だけじゃなく、皆さんのハートもですね。

本当に良かった、私が女性じゃなくて。きっと女性だったら、シブラクには二度と来たくないと思うだろう。だって好きになっちゃうから。異性として見ちゃうから。少しお姉さん的立場で、「あらあら、三四郎君。またやんちゃしてぇ~、もーうワ・ガ・マ・マ」みたいなことを思ってしまうから。

 

 

 古今亭文菊 紙入れ

イケメンの大渋滞だな、と思いながらも登場の文菊師匠。ホストクラブだったらボトル入れてますね。サントリーのオールドに白ペンで名前書きますね。で、「あなたの素敵な高座に、乾杯っ」とか言いながら、二人でどこかのタワーマンションの最上階でスカイツリーを眺めながら、愛の電波を飛ばしまくりますね。地デジじゃなくて文デジですね。チャンネルのどれを押しても文菊、文菊、文菊、高解像度で高精細で、一挙手一投足を見逃さない8Kも驚愕の映像美で、私の脳内を文菊化っ!ってそれまんま文菊じゃねぇかって話になるわけなんですけどね。良くわかんないけど。

ホストクラブとしてはめちゃくちゃずるいよね。上方の甘いマスクと甘いトーンの三四郎くんを見せて、私にシャンパンタワーをさせたかと思うと、今度は雰囲気を変えて一気にアダルトな夜を担う男、文菊の登場ですよ。どう気持ちを切り変えたら良いって言うんですか。これは大罪ですよ。太客の横取りなんて、ご法度ですよ。キャストとの色事だってボーイは禁止されているっていうのに、客とマクラなんてご法度よ!と思いつつ、

あ、あたしには、さんしろー君が・・・」とか強がってあたしが言うと、

いいんですよ、奥さん。さ、一緒にタワマンへ

とか言われて文菊師匠に手を引かれ、そのまま都会の夜景を見ながらジャズに酔いしれて、もう、何か色んなものを折られそうで怖いわっ、あたし。口座ごとあげちゃうっ。あなたの高座に惚れて、私の口座あげちゃうっ。

とか思いつつ、文菊師匠の神がかり的ネタ選びで『紙入れ

 

思いっきり『不倫』の話じゃねぇか!!!

 

これはねー、もうねー、お手上げです。文菊師匠。分かってらっしゃる。としか言えませんわ。あたしの心を読んでるのかしらってくらい、さんしろーくんにどっぷり掴まれた心を一気に引き戻して、「ね、奥さん。いいでしょ?」って、ダンディな声と愛嬌で言われたら、そりゃ誰だって不倫しますわ。不倫は文化ですわ(暴言)

クレジットカードがあったら上限まで使っても足りず、挙げ句は借金するんじゃないかと思ってしまうくらいに、文菊師匠の十八番と言って良い『紙入れ』。シンキチを弄ぶ女将さんのドSっぷりが堪らない。ちょっともう自分の性別が分かんなくなってきてしまうほどに、絶品、絶品、絶品の女形

文菊師匠に弄ばれたい。紙入れの女将さんにも弄ばれたい。二重で文菊師匠に弄ばれて、もう豆腐だったらふやけてバラバラってくらいに、あたしの心は搔き乱されてしまった。好き、もう大好き、でも選択肢が多すぎて誰に決めればいいか迷っちゃう。

 

三遊亭遊雀 蛙茶番

あなたの心をジャックする。正に『YOU JACK』な遊雀師匠。バラバラの豆腐である私の心を抱きしめて、温かいお味噌汁に入れてくれる。そんな大人の了見、懐、渋み、温度。傷ついた乙女のハートをCWニコルが『りんごの木にかくれんぼ』で「魔法の国へ飛んでいこう」と歌ったように、誰も知らないところへ連れていってくれる存在、それが遊雀師匠(もっと他に良い表現はあったはず)

楽屋話も最高で、もう男だけど興奮しました。

 

見たい!!!

 文菊師匠の臀部!

臀部!

臀部!

臀部!

 

叶わぬ夢はさておき、ホストクラブだったら完全にオーナーですよ。正に『名人of名人』。若い頃にきっとたくさんの女性を魅了したのだろうな、と思える眉間。そして様々に変化する表情。七色の声色。全てが一つの頂点に達しているような人なのに、それでもなお、まだまだ「負けてられねぇ!」と思う強烈な意志を持つ遊雀師匠。

これは往年の名俳優である石原裕次郎菅原文太高倉健に通ずる硬派な男の美学ですよ。これですよ。これです。

そんな遊雀師匠の惚れ惚れするような男の美学全開の『蛙茶番

 

いよっ!待ってました!!!

 

と、ようやくこの辺りで自分が男であったことを再確認する。別に確かめたわけではないが。

前半の二人のホスト狂いから抜け出し、自分の人生を歩みだす様は正に坂口杏里そのもの。

このネタは簡単に言えば『男のシンボル、開陳!』な話で、底抜けのダンディズムが思いっきり空回りする。とにかく半公が最高である。女性には引かれるかも知れないが、自分を愛してくれるという話を聞いただけで、心を奮い立たせて遮二無二燃えるのもまた、男なのである。男とは、時として、そういう生き物なのだ。馬鹿だと思って笑うなら、笑うがいいさ。それでも、男はめげない。不倫にビビる男も入れば、堅物の若旦那も入れば、ちょっとした喜びを力に変える男もいるのである。

たとえ思いっきり空回りしても、男には意地がある。誇りがある。好きな女の前では恰好良くありたい。誰もが惚れ惚れするような存在でありたい。そんな男の美学を、たっぷりの笑いに包んで表現する遊雀師匠に、男である私が惚れるのもおかしくないことなのだ。

ここまで見て感じたのは、客席の温かさに呼応するように、とても演者が楽しんでいるように見えた。特に遊雀師匠は思わず言葉にしてしまうほど客席を褒めていた。客席にいる私としても嬉しい。芸は客と演者が作る。それを身を持って実感しているのは遊雀師匠本人であろう。

素晴らしい。本当に素晴らしいホストクラブ『MEIJIN』。オーナーの遊雀師匠に別れを告げ、いよいよ店を出たところで、バッサリ闇討ち。

 

 蜃気楼龍玉 牡丹灯籠~栗橋宿~

不倫の罪は重かったか。私は敢え無くバッサリと龍玉師匠に袈裟掛けに心を斬られた。鮮やかな一閃。トントン拍子の語り口と迫力の声。言葉の語尾に雲助師匠の影響が感じられて最高。

初めて龍玉師匠を見たのは、鈴本の寄席、ネタは強情灸。強面の表情からは想像も付かない骨太な落語で笑いを起こしていた。今宵は怪談話。遊雀師匠まで思いっきり会場が爆笑していたから、ここは怪談話で締めるだろうと予想していた。

栗橋宿』については、詳しい内容は他に頼るとして、男女の関係性を巧みな言葉と表情で表現していた。正直、初めて見た人は戸惑ってしまうのではないだろうかと思うくらいに、真に迫った龍玉師匠の語り。

特に登場する人物の表情が、龍玉師匠にしか出来ないと思えるような表情。シリアスに寄りすぎず、どろどろし過ぎず、割とあっさりと聞けるのは龍玉師匠の持つフラの影響があるのだろうか。

今は、龍玉師匠をどう表現していいか、私には分からない。

とにかく、凄まじい高座だった。

この記事の前半のふざけっぷりが嘘みたいに、キチッと場が締まって終演。

 

 総括 狂乱の一夜

久しぶりに最高の四人を見た、というような回だった。一か月前に期待した以上のものが今日、ユーロライブの会場には存在していた。三四郎さんは度肝を抜くような笑いで、文菊師匠は鉄板の色気で、遊雀師匠は名人の艶色で、そして龍玉師匠は得体の知れない真剣味で、会場を塗り替えていた。

凄さの渋滞のような回である。さすがに冷静に文章が書けないと思ったので、感情のままに書いた。

本当に素晴らしい会だった。安心して上方に行けますわ(何に安心したのか)

さて、実はもう一記事。この回の前に昇々さんの回にも参加した。これは次回のお楽しみ。

落語的ホストクラブ『MEIJIN』、次は一体いつ開かれるやら。次はシャンパンタワーどころじゃないかも知れない。レッドカーペットを引くかも知れない。ってそりゃ緋毛氈か。

今はまだ興奮状態である。冗談だと思って読んで頂けたら幸いである。(8割本気だけど)