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自称・演芸ブロガーが語る日本演芸(落語・講談・浪曲)ブログ!

熱燗のみのみ 流れ流されゆらゆらり シブラク レビューあとがき~2019年11月13日 20時回~

 

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ソフィー・アムンセンの家は、街の一番外れにあって、

庭の向こうには、もう大きなノルウェーの森が始まっている。

ヨースタイン・ゴルデルソフィーの世界

  

落語のカッコ良さ

渋谷らくご、今月のレビューはこちら

 

 http://eurolive.jp/shibuya-rakugo/preview-review/20191113-2/

 

今回は、思いっきりリラックスして書きました。会を終えて、二時間くらいぼんやりしながら、三時間くらいダーッと書いたんですよ。書く前のぼんやり段階で、熱燗飲んで、五目麺をつまみながら、「うめぇなぁ、おい。うめぇぜぇ、おい」みたいなことを壁に向かって言ってました。壁と友達になりたかった。僕の言葉を「そうだよね。そうだよね。何も間違ってないね」と慰めてくれる壁と友達になりたかった。きっとシャドーボクシングとか、一人キャッチボールしてる人も、こんな気持ちなのかな、とか思いながら、ただぼんやり、熱燗を飲んでおりました。

おちょこに『文楽』って書いてあって、もう、文楽って言ったら、落語好きはみんな『桂文楽』師匠じゃないですか。楷書の芸ですよ。ああーなるほどなぁ。墨とか書道とか、水墨画とか、そんなところに繋がってくんのかーと思いながら、シブラクの会を思い出していたのです。

最初に書いた『落語の加減乗除』は、アカデミック&One比喩Onlyな、今思えば『ガッチガチに固い』レビューだったなぁと思って、その時の『モード』だから、しゃあない。あれがあの時のベストじゃ。と思って熱燗をグイ。二つ目の記事は、もう禿げるほど文字数制限の呪縛に苦しめられ、二度とやるまい!と心に誓った記事で、それによって僕の文字数が矯正された感がありました。

今回は思う存分、肩の力を抜いた感じになりました。考えたり、伝えようとすることも大事だけど、『感情を文章に乗せて整える』というのを意識しました。というのも、物凄い酔っぱらって聞いた『いつまでも少年のままで』の記事に、私にシブラクレビュアーの情報を教えてくれたナツさん(超美人)が、コメントをくれたので、「えっ、こんなんがええの?」と思いつつも、まぁ、ぼんやり聞くものだし、今回はいつものブログ感覚で、ちょっと書いてみよーと思ったのです。

 

ディランと永井先生

気づく人は気づくと思うんですが、今回はちょっと小ネタを挟んでます。タイトルの『流されることなく流れを作る』という言葉。これは今のシブラクにガッチリピッタンコやんけと思い、冠しました。

これはボブ・ディランの『Forever Young』という曲の歌詞である『May you have a strong foundation when the winds of change shift』の日本語訳で、『流されることなく 流れをつくりますように』という意味なのです。

どうですか。

痺れませんか、このセンス。

うおお、めっちゃ良い歌詞だぁと、中学生の頃に思いまして。

ディランは歌詞が最高なんですよ。ディランは物凄い飽き性らしくて、昔の曲とか原型も残さないくらいメロディとかを変えてるんですけど、歌詞だけは核の部分を残していて、それがかっけぇなぁ、と思うわけです。

だって、普通に考えたら、ありえなくないですか。来日して、ディランファンがすりきれるくらいレコードで聴いているであろう曲を、全然違うメロディとアレンジで歌われたら、「ふっざけんなー!」ってなりませんか?

でも、そのアレンジをして歌ったとしても、ディランファンが『凄いもの見た・・・』ってなるのは、やっぱりディランが凄いからだと思うんですよ。ディランが体現してるのは、「今が俺のベストだ。留まるか、行くかは、お前の自由だ」みたいな精神を感じるんですね。

ま、ディランの話はまた今度にして。

そんなディランの英詞をセンスの良い日本語に訳したアーサー・ビナード氏に敬意を表して、拝借したタイトル。物凄い気に入っているので、誰に何と言われても気にならないくらい、好きです。

 

さて、小八師匠ですよ。これがもうね、カッコイイの。凄いの!南野陽子ばりの『熱っぽいの!』と『追いかけたいの!』が飛び出すカッコ良さ。袖から登場の様子をどうしても描写したくて、言葉を探しました。

でね、まぁ、使いたかった言葉を今回は使いました。ずばり『あなたまかせの風に吹かれて』ですよ。どうですか。お姉さん、お兄さん、痺れませんか。

この『あなたまかせ』の言葉は、永井龍男先生の『四角い卵』から拝借。文中は『あなたまかせの眠さの中で』という文を、今回はディランの『Blow in the Wind』と組み合わせて文にしました。

これね、どっかで出したいなとは思ってたんですよ。そういう空気を纏った人、いないかなーと思っていたら、小八師匠にぴったりだな、と思ったんです。

そこからはもう、思ったままに書きました。洗顔クリームのくだりは、確か彦いち師匠のマクラで聴いた話だったかな。白鳥師匠の失敗エピソードだった気がする。古本屋で新刊買っちゃうミスは僕ですね。そもそもなんで新刊置いてたのか分かんないけど。

僕もかなりおっちょこちょいで、忘れっぽいので、粗忽の釘が大好き。いっそ釘で隣の家をぶっ壊しちゃうくらいの人が出てこないかなーと思っていたり。僕の周りにもおっちょこちょいが多いので、類は友を呼ぶのかも。

 

小痴楽師匠のところも、ディランの『Like A Rolling Stone』を入れてます。『転がる岩』の部分です。

書いている時に意識したのは、桜木花道も転がる岩も分からない人のために、次の文章でどんな感じかを説明する書き方にすること。たとえば、『文菊師匠は山水図のような噺家だ。墨一色で様々な色を見せてくれる。筆使いから奥行きまで、全てが簡素にして清廉なのだ』みたいな書き方をすると、「山水図って何?」という人にもイメージしやすい。仮に「文菊師匠は山水図のような噺家だ。演目はどれも素晴らしい』とだけ書くと、山水図が何か知っている人以外、イメージしづらい。だから、何か話題の映画とかドラマの固有名詞を出すときは、『その映画やドラマを見た人にしか伝わらない』書き方はしないようにしている。

小痴楽師匠の得体の知れない修学旅行感を書きたくて書いた。海とか、船とか、昔の思い出が蘇ってくる。動物園のくだりも、一人で動物園に行った時に見かけた子供の様子とかが思い出されて、そのまま書いた。

開演前に本にサインを書いていたので、『まくらばな』を購入。印象に残ったのは、とある方が宛名を依頼した際の小痴楽さんの一言。語弊を招くと悪いな、と思ったのでカットした。

巌流島って、演者が消えやすい話だと思う。美しい情景に現実の視界が想像の視界にシフトしていく気持ち良さを存分に味わうことができた。

 

お次の柳家小里ん師匠。美大出身の女子大生の感覚で書きました(なんじゃそりゃ)

というのも、初心者の人が小里ん師匠を初めて聞いて「落語、超すげぇ・・・」ってなるか、怪しいな、と思ったんですよ。僕だって、最初見たとき、「あ、なんか怖い人でてきた」くらいにしか思ってなくて、しばらく寄席で見てもピンと来なかった。同じように小満ん師匠とか、今松師匠もピンと来なかったんだけど、聴いているうちに「あれ?ヤバくね?」、「んんん?カッコ良くね!?」、「ヤバイヤバイ!!!すげぇカッコイイ!!!」みたいになったんですよ。これはあくまでも僕の体験なんだけど、そういう渋さ。一周回って気づく大人の色気みたいなものを、僕は伝えたかった。

だからタピオカミルクティーから豆大福と日本酒の文章は、そういう移ろいみたいなものを読者に意識してほしかった。墨一色の喩えも、書道部というか水墨画感覚というか、円山応挙とか長沢芦雪が好きな美大生のような感覚で書いた。

書き過ぎるとマニアックになると思ったので、簡潔に書いた。小里ん師匠。渋くて超カッコイイんですよ。なんていうか、最近のジャニーズの若い子のようなわかりやすいフレッシュなイケメンというよりも、年を重ねた色気を醸し出す近藤真彦の渋いカッコ良さって言えばいいんですかね(いみふみこ)

 

トリの扇辰師匠。冒頭は合気道の達人、塩田剛三です。動画見ると「絶対ヤラセだろ・・・」と思ってしまうくらい、もう、塩田剛三に襲い掛かった大の大人が次々と弾き飛ばされていくんです。「嘘やん・・・、満員電車とか乗っちゃいけない人やん」とか絶対思うくらいに、凄い技を持った人なのです。

そんな合気道の達人の名言で、合気道で最強の技は「自分を殺しにきた相手と友達になること」というのがあります。扇辰師匠の醸し出す雰囲気は、『二番煎じ』という演目と重なって、どんな人とも友達になるような懐の深さを感じたわけです。

思えば噺家さんはみんな、高座で一言発したときから、客席と距離をグッと縮めていく。いわば相手に気を合わせる感覚があって、それが冒頭の比喩になりました。

『二番煎じ』最高でした。もうね、僕に熱燗飲ませる芸ですから、それはそれはすさまじかった。奥行きの技が随所に光っていて、そういう感動を書いたら、やっぱり長くなってしまいました。

全体を通して4000文字弱だから、前回の矯正『短歌百倍式』が効果を発揮したんだと思う。ブログだととめどなく書いちゃう癖があるから、ある意味、二つ目の記事は僕にとって必要な記事だったんだな、と今は思う。

色んな方にアドヴァイスというか、お言葉も頂戴したり、直接お会いする機会も増えて、二年目にしてブログを書き続けた恩恵に預かっている。本当に嬉しい限りで、続けていてよかったなぁと思う。

もうすぐ200記事だから、そろそろはてなProにしようかな、とも思っている。毎日100を超えるアクセスを頂くので、地味に読まれているブログになってきたのは、色んな方の支えがあったからです。

感謝しか無いです。お会いできる機会があれば、なるべく会ってお話する心は出来ておりますので、遠慮なくお声がけ頂けると幸いです。

それでは、また次回。

いずれ、どこかで会いましょう。