落語・講談・浪曲 日本演芸なんでもござれ

自称・演芸ブロガーが語る日本演芸(落語・講談・浪曲)ブログ!

WLUCK LIVE Vol.2 感想

そういう目で見よう

 

 髪切りたくて

 

2000円

 

みんなが思う

 

タイミング

 

いーやっ!

 

好感が持てる

 

だめだ

 

トマト

 

ビーフ

  

 銀兵衛『検索履歴』

 一聴しただけでは意味が良くわからない理論を、高らかに、大真面目に、訴えるように叫ぶことによって、圧倒的な説得力を持って観客を笑わせにかかる二人組、銀兵衛。グレイモヤで、衝撃の『イチゴのショートケーキ』で会場を揺らすほどの爆笑を起こした若手漫才コンビだ。漫才の形式として、他に見たことのない革新的なスタイル。

 それが今の銀兵衛の持ち味だと私は考えている。

 誰もが真似をしたくなるような、小松さんの熱弁と、恐らくは観客と同じように傍観しながら聞いているあゆむさんの姿は、銀兵衛というコンビの一つの特徴である。

 小松さんの熱弁が巻き起こす理論が面白い。言われてみれば、何となくそうだと思えるような事柄を、絶妙な理論で繋ぎ合わせる。その細くとも強靭な理論に一度心を捉われてしまったら、後はもう銀兵衛の手の中で踊らされるだけである。最初に放たれる『そういう目で見よう』という言葉から全ては始まっている。

 どんなにめちゃくちゃな理論であっても、『そういう目で見る』というマインドセットが出来上がってしまうと、どんなことでも脳が勝手に理論の欠落部分を補ってしまう。たとえ、探偵のバイトをしたいと思ったことがなくても、「ああ、そうか。なんとなく、探偵のバイトをやろうとしてたかも」と、ネタに自分を合わせにいく。すると、火の付いた木をさらに燃やそうと、小松さんは捲し立てる。状況を熱く語りながらも、決して破綻することのない、力強くも整然とした理論に打ちのめされて、見る者はただただ笑うしかない。

 この魅力は銀兵衛だけが持っている。最強の漫才スタイルを持っている。それだけで、銀兵衛の未来は明るい。

 

 元祖いちごちゃん『鹿せんべい

 鹿の生まれ変わりかと思うような男が鹿に与えるせんべいを食べようとする。ただそれだけのコントなのに、とてつもなく面白い。それは、鹿の生まれ変わりかと思うような男の風貌が持つ説得力にあるように思う。何かしら不幸な状況に追いやられ、鹿のせんべいを食べるしかなくなった男。鹿せんべいを食べた瞬間、絶妙なタイミングで流れるサンサーラ。思い当たる節があるとすれば、バンビーノのネタ形式であるが、元祖いちごちゃんの場合は、悲壮感が漂う。むしゃむしゃと鹿せんべいを食べる男の、言いようのない奇妙さが面白い。なぜ鹿せんべいなのか。そして、なぜ鹿せんべいを食べなければならないのか。何一つ説明されないがゆえに面白さがある。

 

 ブリキカラス『美容院』

 坊主と髪の長い男のコンビ。美容院に行きたいという他愛もない話から繰り広げられる不可思議な話。なぜ、そこまで髪を伸ばしていたのか。髪を切ることに抵抗は無いのか。様々な疑問は残るのだが、髪を切りたいという男の奇妙さが、ソフトに見る者の心をくすぐる。私だったら、あそこまで髪が伸びる前に切る。

 

 サスペンダーズ『ペイチャンネル

 もはや無敵のサスペンダーズ。グレイモヤでも見せた、私的に最強のネタだと思っている『ペイチャンネル』。古川さんの登場からして面白い。ペイチャンネルでカードを買う者の心理を見事に切り取った場面から、まさかのハプニングが巻き起こる。そこからは、まるでカイジの『沼』を見ているかのような、ペイチャンネルとの攻防が繰り広げられる。物凄く面白いネタなので詳細は避けるのだが、古川さんの個性が爆発している。

 せっかく、ペイチャンネルを楽しむ環境に置かれたにも関わらず、その幸運を謳歌する過程で起こる災難。ペイチャンネルが見たいという欲望に駆られて、よくわからない理論をぶちあげて、一世一代の大勝負に出る場面は、得体の知れないカイジ感があって、何か良く分からない解放感がある。言葉では説明できない面白さ。もっと長尺で見たいと思った。出来る限り、サスペンダーズが作り上げるコントの世界に浸っていたい。早く、サスペンダーズの単独ライブが開かれないものか。

 

 キュウ『好きな色』

 違いを認め合い、その違いを指摘して起こる奇妙さが面白いネタだった。淡々とした語りの中に、見事にズレがあって、そのズレが面白い。

 

 5GAP『バッティングセンター』

 古き良き伝統の時代を感じさせる面白さだった。一周回って面白いというのか、やっぱりみんな、こういうコントも好きだよね、というような、ベタなクスグリが多いコントで、それはそれで面白くて好きだ。何も考えずに身を任せて笑える。

 

 東京ホテイソン『謎かけ』

 テレビで見たネタは『回文』だった。最初に作り上げたルールから見事に脱線していく男の発言を、寸分の狂いもなく指摘することによって、面白さと凄さが同時に押し寄せる不思議な漫才である。一度癖になってしまうと、次はどんな感じなのだろう?とワクワクする。どことなく歌舞伎役者のような言い回しをする男の姿が面白い。アンミカの知名度が気になるネタだった。

 

 ファイヤーサンダー『占い』

 優しいコントだ、と思った。ことごとく、最初の予測と離れた占い師の姿に、徐々に占われる方が心動かされていく過程が面白い。占い師の自信満々な様子が、後半に行くにつれて形を変えて行く。真っすぐな占い師と、真っすぐさを評価する占われる男。優しさに満ち溢れた、誰も傷つかないコントが素敵だ。

 

 蛙亭『ソフレ』

 テレビで見たネタは『教室で爆弾を出す』というようなコントだった。WLUCKでは漫才形式で、なぜか男の方が女役をやり、女の方が男役をやる。女の方がやる男が見事なチャラ男っぷりで、こんな人が本当にいるのか!?と疑ってしまうのだが、会場の笑いを聞くと、意外とあるあるなのかも知れない。

 

 オズワルド『イライラした話』

 グレイモヤで見たとき以来のオズワルド。普通の話題かと思いきや、冒頭から色々と脱線し、後半に行くにしたがって絶妙のスピード感で訳が分からなくなっていく面白さが気持ちいい。メガネをかけた男性の強烈なツッコミに対して、気にする素振りもなくムチャクチャな言葉を放つ背の高い男性の姿が面白かった。

 

 ななまがり『わさビーフ

 ラストはMCを務めたななまがり。水曜日のダウンタウンで令和を当てたコンビという認識だった。コントは、まさにわさビーフに絡むネタ。繰り返される『わさビーフ』という言葉だけでも面白いのだが、『わさビーフ』に纏わる人間模様を詳細に描き出す面白さは、まるで半沢直樹を見ているかのよう。

 時事に絡めた話もあって、勢いと合わさってとても面白かった。そういえば、わさビーフ全然食べてないなぁ。と思いながら聞いた。