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自称・演芸ブロガーが語る日本演芸(落語・講談・浪曲)ブログ!

You Get What You Give~2019年11月24日 すみっコぐらし~

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You've got a reason to live
Can't forget we only get what we give

君には生きる理由がある
忘れちゃいけないよ
まずは差し出さなくちゃ
何も与えられない

New Radicals『You Get What You Give』

  

君の素敵な人生のすみっこ

新宿ピカデリーで映画『すみっコぐらし~とびだす絵本とひみつのコ』を見てきました。1時間ちょっとの映画なのですが、結論から言いますと、

 

大号泣!

 

もうすぐ齢三十に差し掛かろうというロンリー・ボーイが、ぼろっぼろに瞼を濡らす感動の名作でした。笑いあり、涙あり、えっ?と驚く展開から、ラスト。そしてエンドロールまで。心の中で、ずっと叫んでいました。

 

ひよこぉおおおお!

ひよこぉおおおお!

ひよこぉおおおお!

     ひよこぉおおおお!

 

見る人が見れば分かると思いますが、それだけ素晴らしかったのです。

 

自己紹介から始まる

物語の始まりは、登場人物たちの紹介から始まります。

これがですね。これを見るだけでも、満足なんですよ。

恥ずかしいから詳細は語りませんけどね、どのキャラも

「おれかよ・・・」と思うほど、共感してしまうキャラクターなんです。

特に、エビフライのしっぽとか、とんかつが出てくるんですけど、

このとんかつがねー、最高なんですよー。(顔をくしゃくしゃにして語る)

私はですね。このとんかつを推したい。激推ししたい。

見ていない方もいるので、ネタバレは避けますが、

というか、まだ公開中なので、なるべくネタバレは避けますが、

『とんかつ』の活躍には、泣いてしまいますよ。

悪者を作らない感じが最高なんです。

エビフライのしっぽを大事に思っていたりですね。

とにかく、『とんかつ』の活躍を見て頂きたい。

そして、もう一人(?)オススメのキャラがおりまして、

『ぺんぎん?』というキャラ。

これもですねー、いいやつなんですよー(嬉しさ全開の笑みで)

特にね、今回登場する『ひよこ』への思いとかね。

最後の場面があるんですが、

そこはですね。

もうね、『ぺんぎん?』の気持ちを考えると、

泣いちゃいますよ。

読んでいる人は訳わかんないと思うけど、

見た人なら分かってくれるはず。

『ぺんぎん?』はですね。自分のアイデンティティ

疑問を抱いているんです。

「果たしてぼくは、ぺんぎんなのだろうか?」

これですよ。

これです。

この問いかけをするキャラについて事細かに語ると長くなるので止めますが、

こういう気持ちを抱いたキャラがですね。

『ひよこ』と出会うことの、

なんとも言えない、

感動。

ここは是非見て頂きたいポイントですね。

 

自分探し

この物語のテーマというのは、私が思うに『自分ってなんだろう?』っていう部分だと思うんです。

最初に出てくる『すみっコ』が好きなキャラたちは、頑張らないし、元気が無いし、いつもびくびくしてたり、疑問を持っていたり、考えている。自分を良く見せようとか、カッコ良くあろうというキャラが一切出て来ない。知らず知らずに、メインから外れてしまって、それを悲しいとも何とも思わずに、ただただすみっこで生きてる。

それが、凄く共感する。「うわ、もろ、おれやん・・・」と思ってしまう。いや、多分、ちょっと違うけど、なんとなく、自分に似ているような気がして、それが凄く、胸に迫ってきた。

敢えて詳細は語らないんだけど、『すみっコぐらし』は凄く落語っぽい。色んな小噺のように、様々なおとぎ話が混じり合う中で、ひみつのコである『ひよこ』を中心に、『すみっこ』で暮らす生き物たちがいろいろなことに巻き込まれながら真実に辿り着く。

優しいんだなぁ。一言で言えば、みんな優しい。同じ痛みが分かるからかも知れないんだけど、大切なことからはぐれちゃったりとか、ど真ん中に立てなくて、気が付けばど真ん中から遠いところに逸れちゃったりとか、そうなっちゃった者だけが持つことのできる優しさが溢れていて、それが最初から最後まで流れ続けていて、私はそれがどうしようもなく愛おしかった。

調べたら、この映画の製作であるサンエックスさんは『たれぱんだ』とか『こげぱん』を作った会社らしくて、私が中学生のときとか、まさにドハマりしていたキャラだった。同級生の女子がみんなシールとかクリアファイルを持っていたのを思い出す。

当時は『癒し系』なんて言葉で括られていた気がするけど、今はなんとなく、『すみっコ』っていう言葉がしっくりくる。忠臣蔵で言えば、四十七士になれなくて逃げちゃう奴等みたいな感じ。一所懸命に命をかけて吉良に討ち入りする人達がいる一方で、行動に移せなかった人みたいな感じ。そういう雰囲気を、私はサンエックスさんから感じる。

と、考えると、サンリオのキャラクターは、どちらかと言えば講談なのかも知れない。大スターのキティや、キキとララ(リトルツインスターズ)がいる。キティは今や連続物のごとく、様々な地方のお土産になるキャラである。もちろん、ぐでたまもサンリオのキャラだが、どこか『たれぱんだ』とは違う雰囲気を醸し出しているから不思議だ。

ま、これは私の邪推なので、判断は読者に任せる。

ちょっと話が脱線してしまった。

 

 与えることで、与えられるもの

すみっこのキャラたちは、その優しさで『ひよこ』が何者であるかを探す手助けをする。散々な目に合うのだけれど、お互いがお互いを思い合っている。決してメインキャラになるような、華々しいキャラはいなくて、一見すると地味なんだけど、その地味さゆえの愛らしさがあって、寄席で見る噺家さんを見るような気持ちで見た。

寄席にはトリを取る大スターもいれば、それほど世間に知られていない噺家さんも出る。でも、全員が同じ高座に上がって話をすることで連帯感が生まれる。『すみっコぐらし』には、『スター不在の寄席の雰囲気』があった。誰もが自分の役割を知っていて、それ以上でも、それ以下でもなく、自分のままに、自分にできる精一杯で行動する。ちょっと背伸びしたりとか、見栄を張ったりすることが無い。あくまでも、自分らしく行動する。それがとても良かった。

ピンチをチャンスに変えるとんかつや、状況に振り回されるぺんぎん?。状況を楽しむとかげや、マイペースなしろくま。一つ一つのキャラを見ているだけで心が和む。

手助けをしていく中で、すみっコのキャラたちが最後にぶち当たる真実。この真実を誰よりも受け入れられないぺんぎん?。真実に気づき、ぺんぎん?に態度で示す『ひよこ』。

これはですね。もう深くは語りませんよ。泣けるので。

見たよって人とだけ、お話しがしたい部分なんですよ。これは。

なんていうんですかねー。この、身の丈を知るっていうことの、儚さっていうんでしょうか。

自分とあなたは、住む世界が違うんだってことに気づく瞬間の、残酷なまでの悲しさって言うんですかね。

その瞬間に気づいた後のキャラの行動。その後の行動に注目していただきたい。

誰も一人じゃない。

そうですよ。

 

誰も一人じゃない!

 

そういう気持ちをね。教えてくれる。良い映画なんです。

本当は、映画を見ながら、その都度止めて、解説したいくらい素晴らしいんですけど、ネタバレを僅かに避けながら語るしか、記事にする手段が無いのが悔しい。

いっそ、公開が終わってDVDでレンタル始まったら全文書いてもいいかなって思うんですが、その頃には私の意欲もまた別の方向に向かっているかも知れないので何とも言えませんが。

ともかく、もしも機会があれば見て欲しいです。

落語好きにはたまらない映画じゃないでしょうか。

あと一つ注意としては、『子供心に帰る』ことが、鑑賞のポイントかと思います。

下手な大人の理屈をどこまで捨て去って見れるか。

逆に、楽しめなかった人は、大人になりすぎてしまっているのかもしれません。

いつまでもトイザらス・キッズな人には良いかもしれません。

さて、何を言っているのか分からなくなったところで、

この記事を終わりたいと思います。