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2018年9月1日 池袋演芸場~雷門助六 桂伸治~

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あたしの長講は10分 ちょうこっとなの

 

待ってました!大門町 

  曇天の空模様の中、本日は池袋演芸場の昼夜入れ替えなしの公演に行ってきた。昼席は満席で立ち見も出るほど。昼席トリを務めたのは雷門助六師匠。演目は気の長短。トリで長短かぁーと思いつつ、目当ての夜席に向けて気持ちを整える。

 これは恐らく集中力と時間の問題なのだが、昼はちょろっと落語を見て夜は豪華ディナーにでも行こうか、という客が多いのだろうか。個人的にはせっかくの昼夜公演なのだから、夜までがっつり見るのが醍醐味だとは思うのだが、どうやらそういう人は限られているようである。

 伸べえさんも笑遊師匠も遊雀師匠も出る夜公演。これはもう爆笑に次ぐ爆笑の寄席になるぞと思い、高鳴る胸を押さえて席に座る。驚くことに客席はまばら、昼席とは大違いの空席の数。内心、くそう、伸治師匠の素晴らしさがまだ世間に伝わっていないのだなぁ。と思い、その時に私はこの記事を書くことを決意した。

 さて、夜席が始まって一発目は前座の桂しん乃さん。前情報によれば最近伸治門下に入ったらしく、落語会では結構な話題となっているらしい。いつも何かに困っているような顔つきをしていて、ちょっとヒステリックさを感じさせる不思議な女性落語家である。

 高座を拝見させていただいたのは今回が初。演目は『子ほめ』。始まってすぐの小噺などを聞いていても、強烈な歌劇感というか、声の強弱・高低・抑揚がしん乃さん独自の個性で表現されていた。正直に言う。私には違和感しかなかった。それはしん乃さんの個性が強すぎるように感じられて、私は気おされてしまった。こういう落語の演じ方もあるんだという衝撃が首筋を走った。普段の寄席に通っていても、なかなか味わうことの出来ない凄い方向に空気が向かっているのが分かった。そういう意味でしん乃さんの落語には空気を変える力があった。

 さらに言えば、何か強い意志のようなものをしん乃さんから感じた。「あたしの思う落語はこうなんだ!」という見えない意志。きっと誰に何を言われても曲げないんだろうな、という頑固さを感じて、ちょっと怖くなった。これはあくまでも私がそう感じただけであって、考えすぎなのかも知れない。故に賛否両論がはっきり分かれる落語家さんだろうなぁと思う。正直、落語家じゃなくて劇団員の方が向いていると思う。

 で、この後である。うわー、絶対にやりにくいだろうなぁ。この空気をどう変えて行くんだろうと思ったのだが、心配することはない。こちらも負けじの独特のフラ、桂伸べえさんである。マクラからばちっと空気を変えて、独特の間と言葉のテンポで『寿限無』に入った。もうマクラから演目への入り方が天才である。さすがだわぁと感心してしまった。しん乃さんの生み出した空気をガラリと変えて自らの世界を作り出す。前回の記事にも書いたが、それをさらりとやってしまうのだから、大物である。

 改めて伸べえさんの落語の凄さを認識した後で、チャーリーカンパニーのお馴染みの鮮魚ネタ。そこから二つ目になりたての馬ん長改め吉馬さんで『薬缶』。これがまた実に素晴らしかった。彦いち師匠を感じさせる熱さ、とんとんと進む会話のリズム。聴いて随所に盛り込まれる含蓄のある言葉。これからの勢いを感じさせる気持ちのいい二つ目さんだった。なかなか二つ目に成り立てで好印象の落語家はいないのだが、吉馬さんはとても良かった。今後に期待したい落語家さんである

 続いて昔々亭慎太郎さん。北見伸・ステファニーと続いて三遊亭遊雀師匠はお馴染み『堪忍袋』。何度聞いても面白い。

 仲入り前は柳家蝠丸師匠で『死神』。出だしから新しい発見。主人公が火消しの職に就いている。おお、これは新しい切り口だ。オチに絡むぞと思って聞いている。やはり後半の死神の演じ方は怪談話をやる蝠丸師匠だから恐ろしい。きっちり主人公が倒れるところまで演じて、オチを言う。これも他の『死神』とは異なる演出。良い発見だった。主人公を火消しにするという発想が凄い。

 仲入り後は東京ボーイズ。お初のネタ『初恋』。最後はきっちり『長崎は今日も雨だった』からのネタ。面白かったぁ。

 もうすっかり会場も温まって、桂右團治師匠で『かぼちゃ屋』。オーソドックスな演じ方で面白かったし、何より客席がとても優しかった。

 そしていよいよ笑遊師匠。鉄板の十八番『片棒』。来たぞ、爆音落語!見せ場の後で拍手が止まらない。何度聞いても活力のある素晴らしい落語。演じ方も豪快なのが素晴らしい。

 トリ前は檜山うめ吉さんでしっとり俗曲。この人は声と表情が優しい。

 そして、トリの桂伸治師匠。客席からは「待ってました!大門町!」の掛け声。もうかなりの歓迎ムードである。おそらく満席だったらもの凄い熱気だっただろうと思うほど。つくづく思うのだが、昼トリで『気の長短』を見るより、夜席で桂伸治師匠の大ネタを見た方が得だったのではないかと思う。そんな伸治師匠は旅のマクラから『宿屋の仇討ち』。昼席で帰った人は大損だろーと思うほどの熱演。

 桂伸治師匠と笑遊師匠は対を成す落語家だと思う。笑遊師匠が爆音と豪快さで笑いを取るとすれば、伸治師匠はさらりと明るくスマートかつ優しみで笑いを取る。笑遊師匠が赤なら伸治師匠は青という感じ。因みに伸治師匠門下には宮治さんという核ミサイルみたいな熱気を持ったお弟子さんがおり、逆に笑遊師匠門下には小笑さんというローカル電車みたいな人がいるので、そちらも是非見てほしい。

 さて、桂伸治師匠の『宿屋の仇討ち』。踊りの部分では鳴り物も入る。古典の大ネタも伸治師匠はさらりと、とんとんと話が進んでいく。30分という時間を感じさせないほどのテンポの良さ。登場人物もあっさりに味付けされているが、そこは熟練の技。粋な口調で笑いを誘う。聴いた後でさっぱりとした印象のある高座だった。

 桂伸治師匠の魅力はまた別の記事で語るとして、本日の池袋演芸場の寄席。大変に素晴らしい寄席でした。5日までやっているので、お時間のある方は是非是非!

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