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品格と粋、僅かばかりの野良を添えて~10月7日 なかの芸能小劇場 古今亭文菊お宝三席~

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夜這い、皆さんご存知でしょ?今更、知らないとは言わせませんよ?

 

なんですか、この引いていく感じは

 

あたくしは10時担当ですから

 

いちがーっち!いちがーっちはてんてーこてん 

  朝練講談会の後、物販でサインをして書籍、CDを売る松之丞さんを横目に次の会場へと向かう。その前にさくっとレポートを書いて中野へ。この仕事の速さ、藤岡まことばり。

 天候は相変わらずの快晴である。至る所ででんでこ、でんでこのお祭り騒ぎ。中野に着くと太鼓の音が響く。おや、まさか今日の文菊師匠は『火焔太鼓』をやるんじゃないかと思いつつも、中野ブロードウェイを突っ切って、文菊お宝三席。階段を上って二階にある。受付にはお馴染みのマスク姿の主催者。カジさん?というお名前だったと思う。脇を固めるお孫さん?は美人。ここは高級スナックですか。

 まずは客層。ご常連のご婦人方はさることながら、文菊師匠の独演会は美人揃いである。乙な年増から見目麗しい女性まで、幅広い美人を揃える『スナック文菊』。行く、私だったら絶対行く。頭を丸刈りにして睫毛伸ばしてでも行く。

 そんな美人揃いのお客様が揃った会は良い匂いもプンプンするし、色気もあって心無しか客の男性もちょっと色めきだっている。私も変な気を起こして美人に声を掛け、「いいですよね、文菊。でもね、私は白鳥と天どんも・・・」なんてボロが出る口説きを言いそうになる。来たれ、落語好きなチャラ男!

さて、そんな美人達の視線と笑顔を独り占めする罪な男、それが古今亭文菊師匠である。落語界の市川海老蔵と言っても過言ではないと思う。

 そんな古今亭文菊師匠。寄席では生まれ持っての品の良さと、顔立ちの良さをマクラにして笑いを誘う。下手をすれば「気取りやがって!」と嫌われがちだが、そういう嫌味も一切ない。ただ高貴なお姿に男である私も惚れ惚れとする。何とも絵になる師匠である。

 古今亭文菊師匠を語るのは非常に難しい。大好きだからこその苦しみがある。それは追々語って行くとして、ちらっと会場前に見えた林家やまびこさんのお姿に驚く。ちょっと太っているし、何より、あの、その、文菊師匠と違って、その、あの、お顔が

 さ、この続きはご想像にお任せするとして、幕が上がって開口一番は林家やまびこさん。14時45分という時刻を完全に無視した「おはようございます!」という挨拶に、客席が完全に戸惑う。知っている私のような人間でも「お、おはよう・・・」と声にならない声で返答する。会場の美人の顔が強烈に印象的だった。私が感じるに、美人の全員が「お前じゃない、早く文さんを出せ」だったと思う。あちゃーっと思いつつも、お構いなしに、彦いち師匠の弟子らしい元気印と独特の間で演目は『転失気』。去年前座デビューの割には上手い。以前の春風亭朝七さんのような江戸の風派とは違って、オリジナリティを既に獲得した間と言葉のチョイス。ただ残念ながら客席が思いっきり「望んでいるのはお前じゃない感」が出ていて可哀そうだった。客席中央、特に最前列のご常連はびくともせず、むしろ「早く時間よ過ぎろ」というムードを醸し出していたように思う。若干右の席の方々の笑いが多く、左は薄いという印象。これぞ、後列を陣取る私の客層判断である。

 実に面白かったし、『三つ重ねの転失気』というワードには笑った。あれがやまびこさんのオリジナルだとしたら凄い。桂伸べえさんの『饅頭怖い』における『逆水責め』ばりのパワーワードだったと思う。こういうパワーワードは演目が終わった後でも残り続けるから素敵だ。それに間が面白い。珍念の演じ方がクサ過ぎて辟易する落語家もいる中で、やまびこさんの珍念にはそれが無い。珍念のちょっぴりいたずらチックなところも、らしく聞こえていた。

 これまでの前座は大体『元犬』、『道灌』が多かった。やまびこさんで初めて『転失気』だった。言ってしまえばアウェイの会場の中で、凄い健闘だったと思う。

 軽く私が知っている林家やまびこさん情報。うろ覚えですが林家彦いち師匠が小ゑん師匠との二人会で、「モンスターみたいな弟子が出来ましてね、新作もやるんですよ。冷蔵庫に入った肉を取りだしてね、ミノ、モモ、ハツ、レバー、タン、カルビ。みんなそろって部位6!ってのを、この前見せてもらいましてね」と言っていた記憶がある。

 そのくらいしか情報が無くて申し訳ないのですが、高座は『寿限無』を聞いたことがある。とにかくパワフル。寄席だと今日の独演会の何倍もの声量で「こんにちわ!」と叫ぶ。14時過ぎだったので「こんにちわ!」を期待していたけれど、もしかしたら緊張されていたのかも知れない。

 文菊師匠のファン揃いの完全アウェーに紛れ込んだ野良猪(失礼!)の大奮闘を見終え、出てきたのは主役、古今亭文菊。少し前に出た小里ん師匠のお話をされてから一席目は『干物箱』。第一声からお声が鼻声で、あれ?と違和感。と同時にちょっとした恐ろしさを感じる。

 文菊師匠と言えば、その溌溂とした声と江戸の風をビュービュー吹かせる粋なスタイル。その声の魅力は計り知れない。その声が鼻声になっただけで、それまでの落語が微妙に濁っているように感じられ、それを感じてちょっと残念に思っている自分に驚く。と同時に、私自身が文菊師匠の唯一無二の美しい声の調子に惹かれていたのだと気づき、もしもその声が失われて枯れたら?と思い、少しゾッとしたのである。まるで美しいクラシックの音色にノイズが乗ったような違和感を私は抱いてしまった。もしかすると私だけがそう思っていただけかも知れないが、明らかにいつもの声の感じとは違っていたので少し戸惑った。

 最近、特に文菊師匠はオチの語り方が変わったように思う。話によって文菊師匠なりにストンッと来る語り方、間、になったと思う。以前見た干物箱はもっとゆったりしていたし、オチの語りもさらりとしていた。多分模索しているのだと思う。幸太郎は少しオトボケ感が増し、善公は陽気になった。その分、若干親父の演出が薄くなった。これはあくまでも私の個人的な感想である。今日に限ってそうだったのかは分からない。それでも、善公の明るさによって笑いが増した一席だった。

 二席目は『猫の皿』。これが実に丁寧に、たっぷりの間で語られる。特に猫のついでに皿を求める男の表情、皿を売らない店主の表情の機微。文菊師匠は登場人物の心の機微、表情の機微に注目して演じられている。皿の正体を説明されて激高する男の反応に対しても、特に笑いを取ることはせず、あっさりと「俺は猫は嫌いだよ、ちくしょう」っと言った感じでオチまで続ける。オチも店主のねっとりとした感じを表現されていて、今まで見たどんな『猫の皿』とも違って、間がたっぷりだった。文菊師匠は『長短』や『権助提灯』のような短い話をたっぷりの間と表情で演じられている。これは笑いを感じさせる間と同時に『凄み』を感じさせる間だと私は思っている。『長短』における長さんの煙草の吸い方、『権助提灯』における権助の旦那への野次の言い方、『あくび指南』のあくびの先生に至っては、『ゆれるともなく、ゆれる』の動き方。こうした所作と間に凄みを感じさせる。寄席の文菊師匠も実に凄いのだ。

 二席目が終わって、仲入り。一つ苦言を呈するとすれば、二席目の最中にグミ?か何かのお菓子を食べ始めた客がいた。カサカサパキンパキンッと音が鳴って、非常に気が散った。勘弁して頂きたい。独演会でも集中して聴けなくなったら、私はどこに行けばいいのだろう。呼べばいいのだろうか。。。

 三席目は『棒鱈』。これも冒頭の演出を微妙に変えてきている。どう変えてきたかは録音していないので、私がただそう思うだけで、実は変わっていないのかも知れない(無責任)

 惜しむらくは鼻声だったことくらいで、田舎侍の歌は相変わらずぶっ飛んでいたし、それを気に入らない熊五郎の姿も良い。野暮な感じでありながらも、笑えるのはさすがの演出である。田舎侍と言えば文菊師匠は他に『百川』がある。

 棒鱈が出てくるくだりから、オチまで畳み掛けるような演出になっていた。以前はもう少しオチまでの速度が遅かったし、言葉も費やされていたようにも思ったのだが、そのスピード感が実に気持ちいい。終演時間を見て調整したのかは分からないが、畳み掛けるようなオチの語りの爽快感があった。

 

 総括すると久しぶりの文菊師匠のエネルギーを体感し、大満足。風邪気味だったので早くお体を治して、また透き通るようなお声を聞かせて頂きたいと思う。半面、私が気に入っている声に陰りが出てきたら、その時私はどう思うのだろうと少し思ったのも新しい発見だった。同じことで、現在の林家正蔵にも声に関して惜しいところがあると思っている。林家こぶ平時代は明るくハリのある声だったが、今はガサガサとしている。非常に残念に思っている。こぶ平時代の突き抜けて明るい声が今も保たれていたらなぁ。と叶わぬことを夢見る。つくづく落語は怖い商売だな、と思った。

 足早に中野を飛び出し、お次は木馬亭玉川太福さんの月例独演会。これも素晴らしかったぁ。続きは次のレポートで!

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