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山陰の底力~2018年10月21日 連雀亭 春風亭橋蔵 春風一刀 瀧川鯉白 桂伸べえ~

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なんだってねぇえ⤴

 

いっぱいのめる

 

懲らしめてやるんだ

 

消去法で 

朝練講談会の後は、しばらく散歩をした後で連雀亭。何やら前日にトラブルがあったらしいが、本日はお構いなしで問題なく会をやっていた。

木戸に立つのは伸べえさん。「この間の深夜寄席良かったです」と言って着座。全体で8名ほど。あの場にいた方は私だと思っても黙っているようにお願いいたします。

二つ目の勉強の場として存在する連雀亭。ここで見る伸べえさんは一味も二味も違う。どれだけ名演が繰り広げられてきたことか。今回は代演ということでありながらも、トリを取っている。

開口一番は橋蔵さんだ。

 

春風亭橋蔵 『やかんなめ』

以前、深夜寄席で見た時にも思ったのだが、語尾のトーンの上がりが独特である。他では聞いたことの無い口調。パッと見は窃盗か何かで刑務所に入った新米の若手といった風貌。生真面目なのか、それとも抜けているのかも見わけが付かない。独特のフラも無く、ちょっと高い声と語尾の上がりが他と違うということ以外は、あまり突出したものはない。これからどんな風に変化していくのか。そこに行きつくまでが勝負といったところだろうか。

 

春風一刀『のめる』

春風亭ではもはや若手のお家芸(?)の『のめる』。とんとん拍子と一定のトーンが素敵な朝七さんとは異なり、こちらは口調は様になっているけれども、突出したものは特に感じなかった。今布団から出たばかりというような頬のふくらみには、あまり清潔さが感じられず、ちょっと受け付けなかった。フラはあるけれども、まだそれが武器になっていないという感じで、全体の印象としては「眠いのかな?」という感じである。

 

瀧川鯉白 『あげぱん』

この人は狂気である。サイコパスである。高座に上がってから顔を上げた瞬間に「あ、こいつヤバイ」が伝わってくる目と間。そこから一見平凡な会話の中に唐突に挟み込まれるグロテスクな話。こわいこわいこわいこわい。と思っている間に、数名の女性もいる中で演目は『あげぱん』。以前、深夜寄席で見たネタで、オチは忘れていたのだが、登場人物の会話、状況を含めて完全ヤバイ。思春期のリピドーを思う存分ぶちまけた落語なのだが、きっと後に出る人への当てつけだと思っている(笑)深夜寄席の時は、この演目の後に昇々さんがあがって古典をやったのだが、鯉白さんのインパクトが強すぎて全然ウケてなかったことだけは覚えている。

鯉白さんはほぼ競争相手のいないヤバイ側の落語家さんだと思う。一見すると知的で真面目そうなのだが、そのイメージを完全に覆すヤバイネタが、たとえ古典をやっていてもそのエッセンスが溢れ出てしまうところにヤバさがある。でも癖になる。凄いですよ、もう快楽亭ブラック師匠か桂ぽんぽ娘さんと同系統です。

 

桂伸べえ 『ちりとてちん

待ってましたの伸べえさん。登場からもう、抜群の安定感を醸し出している。滲み出る面白いフラ、声、間。今回、長めのマクラで色んな事実を知る。敢えて内容は書かない。

何度かマクラで聴いていた『ちりとてちん失敗談』から、いよいよ噂の『ちりとてちん』。これがもう、抱腹絶倒である。カツ丼からの「お前は胃潰瘍か」というツッコミから、もう怒涛の勢いで挟み込まれる伸べえさんのパワーワード。判別は付かないけれど、オリジナルのワードだとしたら、凄すぎる。

今までたくさんの落語家で『ちりとてちん』を見てきたが、それを凌駕してNo.1に君臨する『ちりとてちん』だった。楽屋からも笑いが起こっていて、同業者も認めるほどの面白さなのである。特に寅さんが出てきて酒を注がれるシーンなんか「そう来たか!」と思うくらいのスピードで酌を断るし、ましてやちりとてちんを食べようとするところなど、もう最高なのである。是非聞いて大笑いしてほしい。

やっぱりトリでの伸べえさんは輝いているなぁ、という印象である。なんであんなに凄いのか、説明のつかない面白さなのである。次々に想像を超えて行くワードを生み出している伸べえさん。次のネタが楽しみでならない。寄席で掛けたら爆笑のネタばかり持っている。狸札、新聞記事、饅頭怖い、ちりとてちん

大ネタも見てみたいところだが、一撃必殺の宿屋の仇討ち一本だけでも素晴らしいので、今後がすごく楽しみである。

これは一つの予言だが、いずれ桂伸べえさんは寄席でトリを取るような凄い真打になるだろう。その日を待たれよ、読者諸君。

 

総括すると、前半はまだまだ精進の本寸法二人と、山陰出身のサイコパスとモンスターの本寸法がぶつかりあった稀有な会だったと思う。鯉白さんも伸べえさんも、もう強烈過ぎて凄いよ。好きだわぁ。

 

という訳で、この会のあと、私は朝練講談会のレポを書き、急ぎある会へと向かったのでした。それは次のレポートで。